乾燥・低温ストレス環境下におけるイネの代謝関連遺伝子の転写制御の重要性

タイトル 乾燥・低温ストレス環境下におけるイネの代謝関連遺伝子の転写制御の重要性
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究課題名
研究期間 2010~2014
研究担当者 圓山恭之進
篠崎和子
発行年度 2014
要約 乾燥・低温ストレス環境下のイネにおける単糖の蓄積量の増加には、デンプン分解、スクロース代謝、グリオキシル酸回路等の酵素遺伝子の転写制御が関与していることが示唆される。また、植物ホルモンであるアブシシン酸量の増加とサイトカイニン量の減少においても、それぞれの生合成に関与する酵素遺伝子の転写制御が関与していることが示唆される。
キーワード 一次代謝、植物ホルモン、転写、乾燥、低温、イネ
背景・ねらい 植物は種々の環境ストレスに応答して遺伝子発現を調節している。親水性タンパク質(LEA/Dehydrin)、解毒酵素、分子シャペロンなどをコードする遺伝子は代表的な乾燥及び低温ストレス誘導性遺伝子として報告されている。また、種々の代謝産物(糖やアミノ酸等)や植物ホルモンも乾燥や低温ストレスによって蓄積量が増減する。この代謝産物の蓄積量の変化には多くの酵素遺伝子が関与することが示唆されていた。しかし、イネの乾燥や低温ストレス環境下において、酵素遺伝子群の分類や網羅的な遺伝子発現解析は行われていなかった。本研究では、イネの鍵酵素遺伝子候補の同定を目的として、乾燥及び低温ストレス環境下における一次代謝と植物ホルモン代謝に関与する遺伝子を網羅的に解析する。
成果の内容・特徴
  1. 乾燥(2日目、3日目)、低温(1日目、2日目)処理後のイネにおいて、24、91、38、52種類の代謝産物の蓄積量の増加、26、8、26、12種類の代謝産物の減少がメタボローム解析で、明らかになり(偽陽性率:p < 0.05)、その中で、単糖が最も顕著に増加する。さらに、ホルモノーム解析では、アブシシン酸が増加し、及びサイトカイニンの前駆体が減少する(偽陽性率:p < 0.05)。
  2. トランスクリプトーム解析では、2,089(乾燥2日目)、5,927(乾燥3日目)、3,576(低温1日目)、4,395(低温2日目)のmRNAの蓄積量が増加し、1,678(乾燥2日目)、6,184(乾燥3日目)、3,147(低温1日目)、4,320(低温2日目)のmRNAの蓄積量が減少する(偽陽性率:p < 0.05)。
  3. 単糖の生合成に関与する遺伝子の中で、βアミラーゼ遺伝子(図1A)、インベルターゼ遺伝子(図1B)、イソクエン酸リアーゼ遺伝子(図1C)は乾燥又は低温ストレス環境下で顕著にmRNAの蓄積量が増加する遺伝子であり、同処理条件下の鍵酵素候補遺伝子であることが示唆される。
  4. ABA生合成に関与する遺伝子の中で(図2A)、9-シス-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ遺伝子(NCED)とABA 8'-水酸化酵素遺伝子(CYP707A)、サイトカイニン生合成に関与する遺伝子の中で(図2B)、サイトカイニンの側鎖修飾を担う酵素遺伝子(CYP735A)は乾燥又は低温応答性遺伝子であり、同処理条件下の鍵酵素候補遺伝子であることが示唆される。
成果の活用面・留意点
  1. 乾燥及び低温ストレス環境下において、転写制御を受ける鍵酵素遺伝子の候補を同定できたため、イネ等の単子葉作物のストレス耐性を向上させる分子育種への応用が期待できる。
  2. 候補遺伝子を過剰発現した形質転換植物体の作製や欠損変異植物体の解析を行い、候補遺伝子の機能を詳細に解析する必要がある。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027719
カテゴリ 育種 乾燥 メタボローム解析

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