クモ糸を紡ぐカイコの実用品種化に成功

タイトル クモ糸を紡ぐカイコの実用品種化に成功
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2005~2014
研究担当者 桑名芳彦
小島桂
瀬筒秀樹
中島健一
発行年度 2014
要約 カイコにオニグモの遺伝子を組み込んで、強くて切れにくいクモ糸の性質を付与した新しいシルク(クモ糸シルク)を生産するカイコの実用品種による作出に成功した。クモ糸シルクは通常のシルクの1.5倍の切れにくさを持ち、クモの縦糸に匹敵するほどであった。クモ糸シルクは実用品種のカイコに生産させているので、糸質が良く、通常のシルクと同様の工程で織物に加工することができた。
キーワード オニグモ、遺伝子組換えカイコ、牽引糸、タフネス、シルク
背景・ねらい 高級天然繊維として知られているシルクをより強く、しなやかにするため、遺伝子組換え技術によって、最強の天然繊維として知られているクモの縦糸成分を含むシルクをカイコに作らせることを試みた。様々なクモの遺伝子を検討した結果、オニグモの縦糸遺伝子が最良であったため、その遺伝子を導入したカイコの作出に着手した。まず2007 年に、実験用のカイコ品種(実験品種)に導入することに成功した。しかし、実験品種が作るシルクが元々少量で弱い(=切れやすい)ため、生産されるシルクは少量で、操糸などの機械工程に耐えられず実用化レベルに至らなかった。そこで、遺伝子導入技術を改良し、通常のシルク生産に用いられるカイコ品種(実用品種)にオニグモの縦糸遺伝子を導入することを試みた。
成果の内容・特徴
  1. カイコの卵に遺伝子を注入するには、細胞が分裂し始める時期に行う必要があるが、実用品種カイコの卵は卵休眠するため、人工的に休眠を打破しなければならない。 そこで、休眠を打破するための浸酸処理後に遺伝子導入をする技術の改良を重ね、実用品種を用いて、オニグモの縦糸遺伝子とカイコのシルクであるフィブロイン遺伝子を融合した遺伝子をもつカイコの作出に成功した(図1)。
  2. 作出したカイコが作った繭から操糸した糸は、通常のカイコの糸に使用する機械での加工に耐える強度を持っており、機械加工により生糸を作ることができた(図2)。この生糸はオニグモの縦糸タンパク質を約1%(重量比)含んでいた。この生糸の強度と伸びを調べたところ、切れにくさを示す数値が、通常の生糸より1.5 倍以上に上昇しており、クモの縦糸の強靭さに匹敵するほど(図3)であった。
  3. さらにこの生糸を精練したところ、光沢や柔らかい風合いは通常のシルクと同様で、紡織機械にかけて織物にすることもできた(図4)。これにより、クモ糸のような強く切れにくい性質をもつ新たなシルク(クモ糸シルク)の生産と製品化が可能になった。
  4. これまでベンチャー企業が微生物でクモ糸タンパク質を大量に作らせることに成功しているが、機械加工可能な強度を持つ繊維はできていない。今回作出したクモ糸シルクは繊維として生産できるものであり、通常の機械加工によってクモ糸に匹敵する強い天然繊維の織物の生産に成功したのは世界で初めてである。
成果の活用面・留意点
  1. オニグモ縦糸成分の含有量を増やせば、切れにくさやしなやかさをさらに向上させることができる。
  2. そのようなクモ糸シルクの特性を生かして、伝線しにくいストッキングなどの衣料用素材としての需要が見込まれる。また、細くて強靭な微細手術用縫合糸などの医療用素材としての利用も期待される。
カテゴリ カイコ 加工 品種

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