CRISPR/Cas9システムによるイネの高効率ゲノム編集に成功

タイトル CRISPR/Cas9システムによるイネの高効率ゲノム編集に成功
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2012~2014
研究担当者 遠藤真咲
土岐精一
発行年度 2014
要約 イネにおいて、CRISPR/Cas9システムを用いて効率的に標的遺伝子を改変できる系を確立した。多重遺伝子破壊に成功すると共に、カルスにおける培養期間の延長により変異効率が向上することを明らかにした。
キーワード イネ、CRISPR/Cas9、ゲノム編集
背景・ねらい CRISPR/Cas9(クリスパー/キャスナイン)システムは、ヌクレアーゼであるCas9と、切断部位を認識するsingle guide RNA (sgRNA)から構成される人工制限酵素であり、様々な生物種においてCRISPR/Cas9システムによる標的変異導入の成功例が報告されている。イネにおいても多数報告があるが、標的配列や、Cas9, sgRNA発現コンストラクト、変異効率の評価法が報告によって異なることから、相互の結果を比較することはできなかった。そこで本研究では、Cas9またはsgRNA発現コンストラクト以外の条件を統一したうえで変異導入効率を比較し、イネにおいて変異導入効率が高い「Cas9, sgRNA発現コンストラクト」の選定を行った。また、1種類のsgRNAによる相同性の高い遺伝子の多重破壊を試みると共に、形質転換カルスの培養期間が変異率に及ぼす影響について解析し、CRISPR/Cas9システムによる植物ゲノム編集技術の確立に役立つ基礎的知見の取得を目指した。
成果の内容・特徴
  1. 6種類のCas9、及び2種類のsgRNA発現コンストラクトを順次イネのカルスに形質転換する方法により、変異導入効率の高いCas9及びsgRNA発現コンストラクトをそれぞれ決定した(図1A)。さらに両者を組み合わせた一体型発現ベクターを用いた場合でも高効率に変異を導入できることを確認した(図1B)。
  2. CRISPR/Cas9システムは、他の人工制限酵素であるZFNsやTALENsと比較して、標的配列の認識に関わる塩基数が少ないため、標的配列(オン・ターゲット)以外の配列が切断されるオフ・ターゲット切断が生じやすいと言われている。この特性を利用することにより、1種類のsgRNAによって複数の類似遺伝子を同時に破壊することができると考え、4種類の類似な遺伝子間で共通性の高い配列をターゲットとする標的変異実験を行った。その結果、sgRNA中で標的配列の認識に関わる20 bpのうち、1 bpのみが異なるオフ・ターゲットにおける変異導入効率はオン・ターゲットとほぼ同程度であること、ミスマッチが増加するにつれて、変異導入効率が低下することが明らかとなった(図2)。
  3. 変異導入効率は標的配列に依存する部分も大きいが、変異効率が低い標的配列であっても、Cas9, sgRNA発現カルスの培養期間を延長することによって変異効率を向上できることを明らかにした(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. CRISPR/Cas9システムはZFNsやTALENs と比較して発現コンストラクトの作製が容易であり、今後人工制限酵素の主流となる可能性は高い。この技術を植物に適用する場合、植物では動物等に比べRNAやタンパク質の直接導入が困難なことから、適切なCas9, sgRNA発現コンストラクトを用いることが効率的に目的とする変異体を得る上で重要となる。本研究で選定されたCas9コンストラクトを用いたイネ遺伝子への高効率変異導入は多数の研究室で再現されており、イネゲノム改変のツールとして幅広く利用されることが期待される。
  2. 倍数体植物や、二倍体植物であっても遺伝子ファミリーを形成する遺伝子を標的とする場合、期待する表現型を得るには、複数の類似遺伝子を同時に破壊する必要がある。オフ・ターゲット切断は、CRISPR/Cas9システムのデメリットとされることが多いが、植物の育種を目的とする場合はメリットとなりうるという概念、およびオフ・ターゲット切断を利用した類似遺伝子の多重破壊の実例を示すことができた。
  3. 培養期間の延長はCas9, sgRNA発現コンストラクトを培養細胞に形質転換する植物種に共通して有効な変異効率上昇法であると考えられる。よって、本知見は、イネ以外の植物を対象とするにも有用であると言える。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027677
カテゴリ 育種 評価法

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