コムギのゲノム配列の概要解読

タイトル コムギのゲノム配列の概要解読
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2011~2014
研究担当者 半田裕一
小林史典
呉健忠
伊藤剛
田中剛
坂井寛章
松本隆
発行年度 2014
要約 生物研などが参加した国際コンソーシアムは、イネゲノムの40倍もあるコムギゲノムの塩基配列の概要を明らかにし、コムギの様々な特徴を決定する遺伝子を約12万個見出した。これにより、農業上有用な特性に関わる遺伝子の単離等を通じ、新品種作出を加速することが可能となる。
キーワード コムギ、ゲノム概要解読、遺伝子情報、染色体位置情報
背景・ねらい コムギは世界第2位の生産量をもつ重要な穀物で、イネ、トウモロコシとともに人類の食糧基盤を支えている。しかし、地球規模の環境変動や人口増加によって世界のコムギ需給は逼迫しつつあり、高収量かつ悪環境でも栽培可能な画期的な新品種の開発が急務となっている。ゲノム配列情報が明らかになれば、遺伝子機能推定や効率的なマーカー作成が可能となり、品種開発の加速化が期待される。本研究では、生物研は国際コムギゲノム解読コンソーシアム(IWGSC)の一員としてコムギ6B染色体を担当し、IWGSCによる染色体ごとのコムギゲノム配列の概要解読に貢献した。
成果の内容・特徴
  1. コムギゲノム解読のため、2005年にIWGSCが結成され、フランス、オーストラリア、アメリカ、イギリス等のコムギ研究の先進国が参加したほか、我が国からは、生物研、京都大学、横浜市立大学、日清製粉等が研究チームを組織して参加した。我が国はコムギの21対の染色体のうち、イネの全ゲノムの2.5倍に相当する6B染色体の塩基配列の解読を担当した(図1)。
  2. コムギ遺伝学における標準品種「チャイニーズ スプリング」を材料として、染色体ソーティングによってコムギの21対の染色体を1対ずつ分離し、染色体毎にDNAを抽出した後、次世代型シーケンサーにより塩基配列を解読した(図2)。
  3. 解読した配列を整列化させたところ、コムギの推定ゲノムサイズ17 Gb(17億塩基対)の61%に相当する10.2 Gb(10.2億塩基対)の概要配列を、染色体ごとに解読することに成功した。
  4. この概要配列と既知の転写産物の配列情報との比較から、124,201個の高信頼度の遺伝子セットを推定した(図3)。
  5. 6B染色体については、生物研はIWGSC論文に先行して推定サイズ914 Mb(9.14億塩基対)の56%に相当する508 Mb(5.08億塩基対)の概要配列を解読した。その中に4,798の遺伝子を推定し、イネ、ソルガム、ブラキポディウム等のイネ科植物の遺伝子との相同性比較を行った(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. コムギゲノムの概要配列とそこから得られる遺伝子情報は、コムギが持つ遺伝子の単離や機能解明に役立つ。特に、コムギは異なる3種類の祖先種からなる異質6倍体(AABBDD)であることから(図5)、塩基配列が類似した同祖遺伝子が存在するため遺伝子の座乗位置の特定等が困難であったが、今回、例えば6A、6B、6Dなど染色体ごとの概要配列が明らかになったことで、農業上有用な遺伝子単離やその機能解析、および品種改良のためのDNAマーカーの開発等を迅速かつ効率的に行うことが可能となった。
  2. 本研究で得られた概要配列情報を利用して、コムギにおけるゲノム情報を利用した育種が可能となる。その結果、病害抵抗性や多収性等を目指した品種の作出が加速することにより、国内外のコムギ増産に役立つ。6B染色体の配列情報については、小麦粉の品質や赤かび病抵抗性の向上に利用できる。
  3. IWGSCと共同して、最終目標である高精度なゲノム参照配列(21対すべての染色体について85%以上をカバーし整列化された配列)の決定に向け、引き続き解読を推進することが重要である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027676
カテゴリ 育種 小麦 新品種 ソルガム 多収性 抵抗性 DNAマーカー とうもろこし 品種 品種開発 品種改良 病害抵抗性

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