バイオマス高生産樹木を作る -組換えによる植物ホルモン合成酵素の活性化-

タイトル バイオマス高生産樹木を作る -組換えによる植物ホルモン合成酵素の活性化-
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 伊ケ崎 知弘
細井 佳久
二村 典宏
吉田 和正
榊原 均
発行年度 2014
要約 植物の成長を制御する植物ホルモンのジベレリンを合成する機能を強化した組換えポプラを作出しました。この組換えポプラでは地上部のバイオマス生産量が増加し、成長が促進されました。
背景・ねらい 樹木は長期間にわたり成長することにより、大気中の二酸化炭素を固定し、樹体に長期間蓄積することができます。バイオマス生産速度を向上させた樹木を植林することができれば、資源としての利用や地球温暖化対策等に幅広く利用できます。私たちは、植物の伸長成長を促進する植物ホルモンのジベレリン(GA) の合成量を調節することで、樹木のバイオマス生産量を改変できるのではないかと考え、GA の合成に関わる酵素遺伝子を変化させた組換えポプラを作出し、成長特性等を解析しました。その結果、茎の伸長速度が速く、人類が材として最も利用する茎のバイオマスが顕著に増大する樹木の作出に成功しました。
成果の内容・特徴

研究の背景と目的

世界の森林は減少していることから、環境保全や将来の資源確保に備えて、樹木のバイオマス生産性を増強する必要があります。植物の成長を制御する因子として、植物ホルモン・ジベレリン(GA)が知られています。GAは、ゲラニルゲラニル二リン酸から4 種類の酵素による反応を経て基本骨格が作られたのち、酸化酵素群により活性型または不活性型となることで成長制御を行っています(図1)。これまでの研究で私たちは28 種類のGA 酸化酵素候補遺伝子をポプラから単離しています。そして、この経路に関わる一部の酸化酵素を強く働かせた場合、伸長成長量が変化することがわかっていました。そこで、バイオマス生産量が向上したポプラを作出することを目的とし、GA 酸化酵素遺伝子を用いた組換えポプラを作出し、人工気象環境下での成長特性やバイオマス生産量の測定や木質成分の分析を実施しました。

伸長成長の良いポプラはバイオマス生産量も多い

樹木の伸長成長量を増加させるには、図1 中の活性型と表記したGA1 やGA4 を増加させる必要があります。そこで、図1 中の赤矢印または、青矢印の反応を触媒する酸化酵素遺伝子をポプラで過剰に発現させた場合、地上部の成長がどのように変化するのか調べました。すると、赤矢印の遺伝子を組換えたポプラの中から、初期の地上部の成長速度が約2 倍に増加した組換えポプラを得ることができました(図2)。この組換えポプラでは、地上部のバイオマス生産量が増加していました(図3)。詳しく見ると、バイオマス生産量は葉で1.2 倍、幹では2.7倍に増加し、部位により増加量に差がありました。
リグニンやセルロース等の木質成分の存在比率については、野生型( 遺伝子組換えを行う前のもの) のポプラと比較して差は観察されませんでした。したがって、赤矢印の遺伝子を強く働かせた組換えポプラは、木質成分には影響を受けないバイオマス高生産ポプラと言えます。
一方、青矢印の遺伝子を組換えたポプラでは、伸長成長量、バイオマス生産量や木質成分について、野生型のポプラと差は観察されませんでした。

バイオマス高生産樹木の利用に向けて

遺伝子組換え作物では、近年、様々な有用な性質を持つものが開発され、商業栽培されるようになってきています。複数の有用形質を組み換えによって高度に発揮するスーパー樹木を作出する試みとして、以前に作製した交配育種の年限を短縮するのに有効な早期開花性の組換えポプラに、今回の赤矢印の遺伝子を導入し、2 種類の遺伝子を組換えたポプラを作出することにも成功しました。
本研究では、成長特性等の評価を広さに制限のある実験室での人工気象環境下で行いました。今後は遺伝子組換え生物に関する法令に従いながら、より自然環境に近い条件での栽培に挑戦していきたいと考えています。

本研究は、森林総合研究所交付金プロジェクト「高バイオマス生産性と高ストレス耐性を付与した組換え樹木の開発」による成果です。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027570
カテゴリ 育種 温暖化対策

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