絶滅危惧種レブンアツモリソウの自生地復元・自生環境改善の取り組み

タイトル 絶滅危惧種レブンアツモリソウの自生地復元・自生環境改善の取り組み
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 河原 孝行
北村 系子
八巻 一成
幸田 泰則
志村 華子
高橋 英樹
庄子 康
杉浦 直人
村山 誠治
飯野 拓也
発行年度 2014
要約 絶滅危惧種保全の先端モデルとして、レブンアツモリソウ保全に関する実証的研究を行いました。共生菌や訪花昆虫とのつながりを考えた自生地復元に成功しました。ススキ刈取りによる自生環境改善の効果を示しました。
背景・ねらい 日本の植物の5 種に1 種が絶滅危惧種になっています。絶滅危惧種に指定されている、北海道礼文島固有のランの1 種レブンアツモリソウを用いて、現状を調査し、自生地復元、自生環境改善のための実証試験を行いました。レブンアツモリソウは、園芸用採取がほとんどなくなった現在でも個体群が衰退していました。また、種子の生産と発芽には、訪花昆虫や共生菌など共生系の保全が重要でした。自生地復元試験では3年以上を経た培養株や鉢上げ株を植栽すると定着率がよいことがわかりました。ススキを刈取って生育環境を改善することにより、開花数が増えるなど、繁殖を促進する効果がありました。これらの成果を行政の保全施策に活かすとともに、絶滅危惧種の調査・保全の注意ポイントとしてまとめました。
成果の内容・特徴

レブンアツモリソウの現状調査

絶滅危惧種の保全には、科学的な調査・保全対策が必要です。絶滅危惧種レブンアツモリソウの希少化の主要因は、かつては園芸目的とした違法採取でしたが、監視活動などにより採取がおさまった現在でも十分な回復がみられません。
鉄府保護区内でレブンアツモリソウの個体群動態を継続的に調査した結果、この12 年間で個体数は約1/3 に減少していました。特に、新たに発生する実生個体が減少し、小さなサイズの個体が著しく減少していました( 図1)。レブンアツモリソウの個体数を予測する推移確率モデルによると、個体群はこのままでは衰退・消失する可能性があります。このことは、これまでのように保護区を囲って放置しているだけでは回復が見込めないことを示しています。

レブンアツモリソウと共生系

植物が次世代を更新していくためには健全な種子が必要ですが、そのためには花粉を運ぶ訪花昆虫が重要な役割を果たします。レブンアツモリソウではニセハイイロマルハナバチが有効な花粉媒介者であることがわかっていましたが、このハチは春にはセンダイハギ、夏にはヒロハクサフジなどのマメ科植物をよく利用していることがわかりました。したがって、これらの植物を保全または移植していくことがニセハイイロマルハナバチの一年を通じた生活を保障し、レブンアツモリソウの受粉を促進することにつながります。また、ランは一般にカビの仲間と共生することで発芽し、生育することが知られています。共生菌を使ったレブンアツモリソウの人工発芽、培養システムを確立していましたが、野外ではこの菌が針葉樹のハイネズとも共生していることがわかりました。したがってレブンアツモリソウを保護・増殖させるためには共生系の利用が重要であることを示しています。

自生地復元と自生環境改善

レブンアツモリソウの自生地復元試験( 図2) では 、自生地周辺に6-8 年生鉢上げ苗や3-6 年生フラスコ苗( 培養容器から直接出した苗) を用いると2 年後の定着率が90%と高いことがわかりました。マルハナバチの訪花も確認されました。
レブンアツモリソウが被陰されないようにススキを刈込んで生育環境を改善した結果、レブンアツモリソウの開花個体やマルハナバチを誘引する蜜源植物などの種数が増加する効果が認められました( 図3)。このことは成長だけでなく繁殖を促進させる効果がありました。

成果の普及の取り組み

このように、絶滅危惧種を保全するためには、繁殖から定着、成長にいたる一連のプロセスのどこが不全となっているかを明らかにし、場合によっては積極的に人手をかける必要があります。この成果は行政の保護増殖事業で実践されているほか、他の絶滅危惧種にも応用されつつあります。また、絶滅危惧種の保全を計画する場合に注意すべきポイントを冊子として作成・配布し、考え方や方法の普及を進めています。

本研究は、環境省公害防止等試験研究費「レブンアツモリソウをモデルとした人を含む在来生態系と共生できる絶滅危惧種自生地の復元技術の研究」による成果です。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027564
カテゴリ 受粉 繁殖性改善 マルハナバチ

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