小規模な林業経営と大規模な木材加工業を結ぶ仕組みづくりの鍵

タイトル 小規模な林業経営と大規模な木材加工業を結ぶ仕組みづくりの鍵
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 石崎 涼子
堀 靖人
久保山 裕史
岡 裕泰
発行年度 2014
要約 木材共同販売組織の設立や強化が進む欧州の実態調査を通じて、小規模な所有者の森林から生産される木材を大規模な製材工場等へ安定的、効率的に販売する仕組みを築く際に重要となる3つの鍵を明らかにしました。
背景・ねらい 国産材を加工する製材工場等が大規模化する一方で、日本の森林所有者の多くは小規模なままです。小規模な林業経営から生産される木材を大規模な製材工場などへ有利な条件で効率的に供給するためには、何が必要となるのでしょうか。本研究では、日本に先立って木材加工業の大規模化への対応が行われてきた欧州における事例調査から、木材の安定的かつ効率的な供給の秘訣が、「木材販売の組織化による木材流通の専門性の向上」、「森林技術者が持つ地域に密着した情報基盤とそれを活用したサービスの提供」、「取引リスクの軽減」の3点にあり、これらに留意した組織の整備や強化が重要であることがわかりました。
成果の内容・特徴

木材加工業の大規模化に対応した木材供給の仕組みとは?

最近、国産材を加工する大規模な製材工場や合板工場が増えていますが、日本の森林所有者の多くは小規模なままです。こうした小規模な森林から、たくさんの木材を有利な条件で効率的に木材加工工場へ供給するには、何が必要となるのでしょうか。日本に先立って、木材加工業の大規模化に対応した仕組みを築いてきた欧州において、11 の事例(ドイツ、オーストリア、スイス)を調査して、その仕組みづくりの秘訣を探ったところ、3 つの鍵があることがわかりました(図1)。

第1 の鍵:木材販売の組織化による木材流通の専門性の向上

小規模な林業経営を束ねて木材を供給しようとする場合に、林業の経営そのものを共同化しようとしても、交渉をまとめるのは簡単ではありません。そこで欧州では、木材の販売だけを共同で行う形態が広く用いられています。森林所有者による協同組織(地区別の森林組合)などを束ねてつくられた木材共同販売組織は、木材の取扱量を増やして販売先を確保するだけではなく、木材運搬の手配や丸太の量・質のチェックに責任を持ち、木材流通を専門的に担うことで、木材流通の効率化や大規模な木材加工業者との交渉力の強化を実現しています。

第2 の鍵:森林技術者が持つ地域に密着した情報基盤とそれを活用したサービスの提供

一方、市況をもとに木材生産量の調整にあたっているのは、森林所有者による組織などです。欧州では、森林の所有者や林木の状況などを熟知する森林官や協同組織の森林技術者が各地域におり、木材生産に関わる助言や指導などを行っています。こうした地域密着型の森林技術者によって、生産可能な木材の場所や量が正確に把握されており、いつでも森林所有者とコンタクトがとれる体制になっています。コンピュータを活用した情報システムに加えて、地域に根ざした知見や人と人との繋がり等の基盤が安定的な木材供給を支えています。

第3 の鍵:取引リスクの軽減

木材の取扱量が増えるとリスクも増加します。木材の販売先が倒産した場合に、回収できなくなった代金の責任を有限にするために、木材共同販売組織は、有限会社や株式会社などの法人形態を採るようになってきています。また、オーストリアの例では、販売する木材に保険をかけることで、森林所有者が木材共同販売組織に加わるメリットを高めています。

日本においては、これらの3 つの鍵がまだ十分に整備・活用されてはいません。小規模な林業経営と大規模な木材加工業を結ぶ安定的かつ効率的な仕組みを築くためには、これらに留意した組織の整備や強化が重要です。

本研究は科学研究費補助金「私有林経営における組織イノベーションに関する国際比較研究」(No.23380095)による成果です。
引用:岡ら(2013)ヨーロッパ林業の最前線-組織・制度に焦点をあてて-.森林科学68
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027545
カテゴリ 加工 経営管理 大規模化

この記事は