ホスファターゼ欠損麹菌の育種により加熱処理不要でだし入り味噌が製造できる

タイトル ホスファターゼ欠損麹菌の育種により加熱処理不要でだし入り味噌が製造できる
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究課題名
研究期間 2009~2011
研究担当者 楠本憲一
丸井淳一朗
多田功生
門馬真里
服部領太
鈴木聡
和久豊
杉本達哉
北本則行
発行年度 2013
要約 イノシン酸を分解する酸性ホスファターゼの主要なアイソザイム欠損麹菌を育種するとともに、その他のアイソザイムの生産を抑制する製麹工程により、高温加熱せずにだし入り味噌の製造が可能となる。だし入り味噌の高品質化、低コスト化につながる。
キーワード 麹菌、だし入り味噌、イノシン酸分解、酸性ホスファターゼ
背景・ねらい 消費者の嗜好と利便志向に合わせて、核酸系調味料(イノシン酸等を含有)を添加した調味味噌が製造されている。核酸系調味料の旨味成分の分解防止のため、現状では80°C15分間以上の高温加熱処理による、味噌中の麹菌酸性ホスファターゼの失活が不可欠である。一方で、加熱臭による風味低下が問題となっている。そこで麹菌(Aspergillus oryzae)のホスファターゼ生産機構を解明し、ホスファターゼ低生産麹菌の作出・使用により高温加熱処理工程を回避することにより、高品質な調理味噌が製造可能であり、且つ低コスト省エネルギー型の新規な製造技術の開発を目指した。
成果の内容・特徴
  1. 麹菌ゲノム解析株(A. oryzae RIB40)のゲノム情報中には、リン酸存在下で発現が抑制される酸性ホスファターゼ様遺伝子と相同的な遺伝子13種類(aphA-M と命名)が見出される。
  2. 味噌用低ホスファターゼ実用株KBN8048 のホスファターゼ様遺伝子aphA-MをリアルタイムPCR装置を用いて発現量を定量化すると、米麹で発現量の高い8遺伝子と豆麹で高い5遺伝子に分類される。
  3. 前者は米麹へのリン酸添加量に依存して遺伝子発現が抑制される。一方、後者の中で最も遺伝子発現量が多く、麹菌の主要なイノシン酸分解酵素の遺伝子aphCは、米麹へのリン酸添加によりその遺伝子発現量が増大する。(図1、表1)。
  4. KBN8048及びそのaphC遺伝子欠損セルフクローニング株を用いた米麹培養を行い、それらへのリン酸添加を行うと、特にaphC遺伝子欠損株で濃度に応じて酸性ホスファターゼ活性及びイノシン酸分解活性が低下する(図2)。
  5. aphC遺伝子が欠失した麹菌株を育種すれば、製麹助剤であるリン酸塩を添加して製麹を行い、醸造した味噌は、イノシン酸分解活性が低く、高温加熱せずにだし添加できると期待される。
成果の活用面・留意点
  1. aphC変異株は、培地へのリン酸添加で酸性ホスファターゼ活性が親株よりも低下する変異株の中から選択可能である。
  2. 味噌用実用株として味噌メーカーに提供するためには、保存菌株の調査や変異処理により低ホスファターゼ株を育種選択していくことが必要であり、さらに味噌メーカーでの実証試験が必要である。
  3. 今後、種麹メーカー等で本提案の育種法の実証が必要となる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027439
カテゴリ 育種 省エネ・低コスト化 低コスト

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