新たに出現した牛由来多剤耐性Salmonella Typhimuriumの遺伝学的性状

タイトル 新たに出現した牛由来多剤耐性Salmonella Typhimuriumの遺伝学的性状
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究課題名
研究期間 2011~2012
研究担当者 玉村 雪乃
内田 郁夫
田中 聖
秋庭 正人
菅野 徹
畠間 真一
石原 涼子
発行年度 2013
要約 2000年以降北海道内で牛サルモネラ症からの分離が増加した多剤耐性Salmonella Typhimurium PFGEVII型菌は、薬剤耐性病原性プラスミドを保有する。このプラスミドと供に第3世代セファロスポリン耐性プラスミドを保有する株も少数例認められる。
キーワード 牛サルモネラ症、Salmonella Typhimurium, 多剤耐性、薬剤耐性病原性プラスミド
背景・ねらい Salmonella Typhimurium(ST)は子牛ばかりでなく、搾乳牛にもサルモネラ症を引き起こすことから、本症の発生は酪農現場で大きな問題となる。北海道内では、2000年以降、新たに出現したパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)型VII型の多剤耐性ST)による牛サルモネラ症が増加しているが、当該菌の特徴は明らかにされていない。本研究では、VII型菌が保有するプラスミドの全塩基配列を決定し、その構造および機能を解析する。それによりVII型菌の遺伝学的特徴を明らかにし、本菌に対する防除対策に活用する。
成果の内容・特徴
  1. 2000年以降広まったVII型菌は薬剤耐性病原性プラスミド(94~130kb)を保有する。
  2. 薬剤耐性病原性プラスミドであるpYT1(110kb)およびpYT2(130kb)は、STの血清型特異病原性プラスミドpSLT(94 kb)に、薬剤耐性遺伝子群(aph(3')-I, tetA, sul1, aadA,blaTEM-1)が挿入配列IS1294を介して挿入される構造を持つ(図1)。pYT2ではさらにその上流に病原性に関連する遺伝子(iutA)を含む領域が挿入されている(図1)。
  3. 挿入されていた配列は、Salmonella Dublin由来薬剤耐性プラスミドpSD88と高い相同性を示す。
  4. pYT1およびpYT2は、海外の研究者によりGenBankに登録されたプラスミドpSal6919aおよびpSal8934bとほぼ同一の配列を示しており、他の地域におけるpYT1およびpYT2と同様のプラスミドの拡散が示唆される。
  5. VII型菌の165株中26株が第1世代セファロスポリンに耐性を示し、染色体上にblaCMY-2を含む薬剤耐性領域GI-VII-6を保有することが報告されている。このうち、第3世代セファロスポリンであるセフォタキシムに耐性を示す株が1株あり、当該株は薬剤耐性病原性プラスミドとともに、blaCMY-2をコードした薬剤耐性プラスミドpYT3を保有する(図2)。pYT3の大部分は大腸菌由来薬剤耐性プラスミドpAR060302およびGI-VII-6と高い相同性を示すが、プラスミド複製に関わる遺伝子を含む一部分は、薬剤耐性病原性プラスミドpYT2と相同性を示す。
成果の活用面・留意点
  1. VII型菌の薬剤耐性遺伝子に関する情報は、VII型菌による牛サルモネラ症の治療や、分離株の疫学的な解析をする上で重要な知見を提供している。
  2. 北海道だけでなく本州でもVII型と遺伝学的に近縁な菌が分離されており、VII型菌および近縁な株の全国的な広まりが示唆される。
  3. 第3世代セファロスポリン耐性のVII型類似菌による牛および人のサルモネラ症が増加していることが海外で報告されており、今後国内でもこのような耐性菌が増加する可能性があり、セファロスポリン系薬剤の慎重使用が望まれる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027388
カテゴリ 耐性菌 乳牛 防除 薬剤 薬剤耐性

この記事は