タイトル |
水田を利用した省力・低コスト肉用子牛生産に活用できる「水田放牧の手引き」 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究課題名 |
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研究期間 |
2009~2013 |
研究担当者 |
千田雅之
山本嘉人
北川美弥
石川哲也
松山裕城
的場和弘
山田知哉
中村義男
花房泰子
小西美佐子
亀山健一郎
安田哲也
森昭憲
渡邊和洋
手島茂樹
池田哲也
恒川磯雄
飯田文子
楠本良延
山本勝利
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発行年度 |
2013 |
要約 |
水田放牧に適した牧草や飼料イネの栽培と放牧利用技術、放牧飼養による繁殖への影響、放牧に伴うリスクとその低減方策、環境への影響、営農への導入効果を解説した手引書である。水田を利用した省力・低コストの肉用子牛生産の推進に活用できる。
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キーワード |
水田、牧草、飼料イネ、肉用牛、放牧
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背景・ねらい |
農業労働力が激減するなかで、水田の有効利用と家畜飼養の省力化を両立できる技術として水田放牧が推進されている。しかし、水田でより効率的な放牧及び家畜生産を行うには、水田放牧に適した草種の選定やその放牧利用における管理技術の開発が必要である。 また、水田放牧に伴う感染症、事故発生のリスクや環境への配慮も必要になる。 そこで、水田の持つ高いポテンシャルを活かした飼料生産と放牧利用技術等を開発するとともに、水田放牧において配慮すべき点を明らかにする。これらの研究成果を、水田を利用した低コスト肉用子牛生産の推進に役立てるため、「水田放牧の手引き」を作成する。
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成果の内容・特徴 |
- 本手引きは、水田放牧に適した牧草や飼料イネの栽培と放牧利用技術、放牧飼養による繁殖への影響、放牧に伴うリスク管理、環境への影響、経営への導入効果に関する研究成果に、既往の知見を織り交ぜた水田放牧の解説書である(表)。以下に手引き掲載成果の一部を示す。
- イタリアンライグラス(IR)等の寒地型牧草、バヒアグラス(Ba)等の暖地型永年生牧草、「たちすずか」等の茎葉型飼料イネ専用品種、再生イネを計画的に栽培し、順次利用することで水田で4月から12月の放牧飼養が可能である(図1)。飼料イネや再生イネを利用した放牧延長は、青森県、秋田県、茨城県、島根県、広島県等で実証されている。
- 上記飼料に加え、稲発酵粗飼料を用いた冬季屋外飼養により、繁殖牛の妊娠維持期7か月間の放牧継続が通年可能である。実証経営では通年放牧導入後、繁殖牛の分娩間隔は約360日、子牛の生時体重は33kg以上となるなど、繁殖成績は高い水準に達している。ただし、水田放牧では放牧初期の牛の栄養低下や脱柵、入退牧・捕獲・移動時の管理者の怪我、夏季放牧時の熱射病や感染症、冬季放牧時の脱柵や中毒症への注意が必要である。
- 水田放牧により、飼料の収穫運搬や給与、家畜排泄物の処理作業が削減されるため、繁殖牛の飼養コストは輸入飼料による舎飼飼養と比べて、牧草放牧で65%、飼料イネ放牧で39%削減できる。また、牧草主体の放牧飼養期間が長いほど子牛生産に伴う温室効果ガスの発生量を抑制することができる(図2)。
- 茨城県の肉用牛繁殖経営では、耕種経営と連携した水田通年放牧の導入により、牛1頭あたり飼養管理は78 時間から42時間に削減され、経営全体の労働時間を節減しながら牛舎の増設なしに、飼養頭数を51頭から85頭に拡大できることが実証されている(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:1頭あたり30a 以上の放牧用地の確保可能な繁殖経営、普及指導機関。
- 普及予定地域・面積等:主に中山間地域、水田放牧実施面積1,500ha 等。
- その他: 水田放牧の手引きは、農研機構経営管理システムのWebサイトから利用できる。
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カテゴリ |
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