香粧用素材として天然高分子量セリシンを利用する技術の開発

タイトル 香粧用素材として天然高分子量セリシンを利用する技術の開発
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2006~2013
研究担当者 寺本英敏
飯塚哲也
亀田恒徳
岡田英二
瀬筒秀樹
玉田靖
間瀬啓介
発行年度 2013
要約 天然の高分子量を維持したセリシン(バージンセリシン)の水溶液を安定的に調製する技術を確立するとともに、カイコの品種を改良して原料繭の生産性を向上させることにより、民間企業が香粧用素材としてバージンセリシンを利用できるようにした。
キーワード セリシン、高分子量、特徴ある蚕品種、香粧用素材、実用化研究
背景・ねらい カイコ(家蚕、Bombyx mori)が作る繭に接着タンパク質として含まれるセリシンは、セリンなどの親水性アミノ酸を多く含み、香粧用素材としての有用性が注目されてきた。繭から絹糸をとる際に除去されるセリシンの回収技術がすでに実用化され、回収されたセリシンは多くの香粧品に配合されている。しかし、除去プロセスを経たセリシンは加水分解を受けて低分子化しており、天然のセリシンが持つ皮膜形成能が失われている。そこで本研究では、当研究所で過去に育成されたセリシンのみからなる繭を作る特殊なカイコ品種「セリシンホープ」を活用し、天然の高分子量を維持したセリシン(バージンセリシンと呼称)を新たな香粧用素材として利用する技術の開発と企業連携による製品化を目指した。
成果の内容・特徴
  1. バージンセリシンの水溶液はセリシンホープの繭層(けんそう、繭から蛹を除いたもの)を臭化リチウム(LiBr)水溶液に溶解したのち透析によってLiBrを除去することで調製できるが、バージンセリシンは分子の凝集性が高く、その水溶液はすぐにゲル化してしまうという問題があった。研究の結果、安定なバージンセリシン水溶液を再現性良く調製するためには、①吸放湿に起因する分子同士の不可逆的な凝集を避けるため幼虫が繭を作る際の通気性を良好に保つこと、②透析処理中のpHを中性~弱アルカリ性に制御すること、の2点が重要であることを見出した(図1)。
  2. セリシンホープを品種改良し、繭の生産性に優れ人工飼料でも飼育可能な改良品種を育成した。さらに、蚕種製造を手がける民間企業に良質な原料繭生産のための技術支援を行い、製品化において重要となる民間ベースでの原料供給体制を構築した(図2)。
  3. 化粧品の開発・販売を手がける民間企業にバージンセリシン水溶液の調製技術を移転した。その結果、東京ビッグサイトで開催された第3回国際化粧品開発展等における試作品の展示を経て、バージンセリシンが配合された初めての化粧品(洗顔料およびクリーム)の試験的な販売が開始されるに至った(図3)。 
成果の活用面・留意点
  1. 原料繭の生産から水溶液への加工までの全ての工程を民間企業が実施できるよう技術支援することにより、バージンセリシンが配合された化粧品が上市された。
  2. 本成果をベースに、凝集性の高さゆえにこれまで利用が困難であったバージンセリシン水溶液を民間企業が安定的に生産できる体制が整えられれば、バージンセリシンのさらなる用途拡大が期待できる。
  3. バージンセリシン水溶液を原料とすれば、セリシンのみからなる含水ゲルや高強度フィルム材料が作製できる。本成果は、バージンセリシンを保健・医療分野等のより付加価値の高い分野へ利用していく上での技術的基盤となりうる。
  4. 本成果の波及効果として、我が国独自のカイコ品種を用いた付加価値の高い製品の開発による養蚕関連産業の活性化が期待される。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027169
カテゴリ カイコ 加工 技術支援 くり 品種 品種改良

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