穂いもち抵抗性遺伝子Pb1による抵抗性機構の解明

タイトル 穂いもち抵抗性遺伝子Pb1による抵抗性機構の解明
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2010~2013
研究担当者 井上晴彦
林長生
松下茜
Xinqiong Liu
中山明
菅野正治
姜昌杰
高辻博志
発行年度 2013
要約 いもち病ほ場抵抗性遺伝子Pb1の作用機構を解明した。病害抵抗性に主要な役割を担う転写因子WRKY45にPb1タンパク質が結合するとWRKY45の分解が抑制され、その結果、強い抵抗性が誘導される。Pb1による抵抗性が崩壊しにくい理由も説明できた。
キーワード イネ、いもち病、ほ場抵抗性、WRKY45
背景・ねらい イネの重要病害であるいもち病の防除のため、我が国では年間約220億円にも達する農薬が使用されている。そこで、イネの品種改良においては、いもち病抵抗性品種の作出が常に重要な課題であり、これまで複数の抵抗性遺伝子が特定されてきた。しかしそれらの抵抗性遺伝子の多くは、一部のいもち病菌系統にしか効果がなく、また数年で抵抗性が崩壊するという問題があった。穂いもち抵抗性遺伝子Pb1は、これまで崩壊の実例のない抵抗性遺伝子として育種利用されてきたが、崩壊しにくい理由はわかっていなかった。そのため、将来にわたって安心してPb1を利用するためにも、その作用機構を解明する必要があった。本研究では、いもち病抵抗性における機能について多くの知見が蓄積してきたWRKY45との関連に着目し、Pb1によるいもち病抵抗性の分子機構の解明を試みた。
成果の内容・特徴
  1. 真性抵抗性遺伝子産物と同様のCC-NBS-LRR構造を有するPb1タンパク質が、イネの誘導抵抗性において主要な役割を担う転写因子WRKY45と結合することを明らかにした(図1)。
  2. Pb1遺伝子を持つがWRKY45遺伝子の発現を抑制したイネの解析結果から、Pb1遺伝子による抵抗性が、WRKY45を介して発揮されていることがわかった(図2)。
  3. 細胞核から強制排出させるアミノ酸配列をPb1タンパク質に付加すると、Pb1タンパク質による抵抗性が失われることから、Pb1タンパク質は細胞核で機能することがわかった(図3)。
  4. これまでに、WRKY45タンパク質は合成直後にプロテアソームによって分解されることがわかっていたが、今回、Pb1タンパク質が結合するとWRKY45タンパク質の分解が抑えられることがわかった(図4A)。
  5. これらの結果から、Pb1遺伝子をもたないイネでは、WRKY45の分解によって抵抗性反応が十分誘導されないのに対し、Pb1遺伝子を持つイネでは、Pb1タンパク質の結合によりWRKY45タンパク質の分解が抑制され、その結果、強い抵抗性反応が誘導されることが明らかになった(図4B)。
  6. 本研究により、Pb1遺伝子の抵抗性発揮がWRKY45の分解抑制を介していることがわかり、Pb1遺伝子が抵抗性を発揮する一連の仕組みが解明された。その結果、Pb1遺伝子による抵抗性がいもち病菌系統に非特異的に有効で崩壊しにくい理由が明らかになった。 
成果の活用面・留意点
  1. Pb1遺伝子によるいもち病抵抗性の仕組みの解明により、将来の抵抗性崩壊の可能性が低いことがわかった。安心して利用できることから、Pb1遺伝子の普及がさらに進むと期待される。
  2. Pb1タンパク質のWRKY45に対する結合力を高め、育種に利用して「高い病害抵抗性を安定的に発揮するイネ」を開発できると期待される。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027162
カテゴリ 育種 いもち病 抵抗性 抵抗性遺伝子 抵抗性品種 農薬 品種改良 病害抵抗性 防除

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