米粒の長さと重さに関わる新規遺伝子TGW6を発見

タイトル 米粒の長さと重さに関わる新規遺伝子TGW6を発見
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2008~2013
研究担当者 石丸健
廣津直樹
円由香
清水文一
宮川恒
柏木孝幸
発行年度 2013
要約 インド型イネ・カサラスから、米粒を長くかつ重くする遺伝子TGW6を特定した。対立する日本晴の遺伝子はオーキシン合成に関わる酵素タンパク質をコードしているが、カサラスの遺伝子は機能を失っており、オーキシンを介する抑制作用が働かないため、米粒が長くかつ重くなる。
キーワード 収量、シンク、ソース、粒形、粒重
背景・ねらい 米粒の長さ(粒長)はイネの収量を決定する主要要因のひとつであるが、国内で栽培されているほとんどの品種の収量性は、粒長等の粒(シンク)サイズではなく、粒への炭水化物の供給能力(ソース能)に大きく依存しており、粒長が伸びても必ずしも粒の重さ(粒重)は増大しない。インディカ型イネ・カサラスより、シンクとソースで多義的に作用することで粒長と粒重をともに増大させる遺伝子TGW6を特定し、その機能解析を行った。
成果の内容・特徴
  1. インドの在来品種カサラスから、粒長と粒重を増大させる非機能型遺伝子TGW6を特定した。また、ジャポニカ型イネ・日本晴からこの遺伝子と対立する機能型TGW6遺伝子も特定した。日本晴TGW6遺伝子は植物ホルモンであるオーキシン(インドール 3-酢酸、IAA)を合成する新規の酵素タンパク質をコードしていた。一方、カサラスTGW6遺伝子には塩基の欠失があり、機能を失っていた。
  2. 形成初期の胚乳細胞では、細胞分裂が一時的に停止し、一つの細胞中に多数の核を含む多核体が形成される。多核体の形成期間の長さが、胚乳の細胞数を決定する。日本晴では、TGW6により作られたIAAが細胞分裂を促し、多核体形成期間を短縮させていた。その結果、カサラスTGW6遺伝子を持つものに比べ胚乳の細胞数が減少し、粒長が短く(シンクサイズが小さく)抑えられていた。
  3. 出穂前にイネの茎に蓄積された炭水化物は、出穂後に発達中の粒(シンク)に供給されるが、日本晴TGW6遺伝子を持つと茎でのデンプン合成遺伝子の発現が低下し、炭水化物の蓄積量ひいてはシンクへの炭水化物供給量(ソース能)が半減した。また、茎でのデンプン合成遺伝子の発現をIAAが抑制することから、日本晴では、TGW6により作られたIAAがシンクに加えソースでも抑制的に作用し、粒が短くかつ軽くなることが示唆された(図1上)。
  4. カサラスTGW6遺伝子には塩基の欠失があるため、酵素タンパク質が作られず、IAAが合成されない。そのためシンクとソースの両器官でIAAによる抑制が働かず、粒が長く、かつ重くなると考えられた(図1下)。
  5. 遺伝子の多様性解析の結果から、機能を欠失したカサラス型TGW6遺伝子はごく限られた系統にだけに存在することが明らかになった。実際、「タカナリ」や「IR64」等の高収量品種や、「コシヒカリ」等の近代・現代の栽培品種のTGW6遺伝子は、機能を保持した日本晴型だった。カサラスTGW6遺伝子をコシヒカリに導入した準同質遺伝子系統(NILTGW633)では、粒長と粒重が有意に増加した(図2)。また、この系統では、高温においても粒数が低下せず、高温による登熟障害が起こりにくいこともわかった。
成果の活用面・留意点
  1. 国内で現在栽培されている品種のほとんどは、カサラス型TGW6遺伝子を持たない。そのため多くの栽培品種において、この遺伝子を利用した生産性の改良が期待される。
  2. 今後、TGW6遺伝子を含むカサラス由来の染色体領域をさらに狭め導入したコシヒカリ準同質遺伝子系統を作出し、育種母本として利用することを予定している。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027160
カテゴリ 育種 高収量品種 品種

この記事は