イネ品種「コシヒカリ」から出穂期を早める遺伝子を特定

タイトル イネ品種「コシヒカリ」から出穂期を早める遺伝子を特定
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2008~2012
研究担当者 堀清純
小木曽(田中)映里
松原一樹
山内歌子
江花薫子
矢野昌裕
発行年度 2013
要約 イネの出穂期を調節する遺伝子「Hd16」を特定した。Hd16はリン酸化タンパクをコードし、日長反応性に関与することが判明した。コシヒカリでは突然変異によりこの遺伝子の機能が低下していた。コシヒカリ型の突然変異は100年前の日本の在来品種に由来することを明らかにした。
キーワード コシヒカリ、出穂期調節、育成品種の早生化
背景・ねらい イネ品種「コシヒカリ」は30年以上にわたって日本一の栽培面積と生産量を維持している。その理由の一つとして炊飯米がおいしいことがあげられるが、日長反応性をもつ日本晴などの他品種と比べて出穂期が早く北陸地方から南東北地方でも栽培できることも大きな理由であると考えられる。しかしながら、コシヒカリの出穂期がなぜ早くなるのかについて、これまで遺伝子レベルでは説明できなかった。本研究では、日本晴とコシヒカリのゲノム塩基配列情報を利用して、出穂期を早くする遺伝子「Hd16」をコシヒカリから特定し、この遺伝子の機能を明らかにした。
成果の内容・特徴
  1. 茨城県つくば市の水田で栽培すると、日本晴と比べてコシヒカリは10日ほど早く出穂する(図1)。日本晴とコシヒカリを交配した実験系統群を用いて、コシヒカリの出穂時期を早くするHd16を特定した。
  2. 日本晴とコシヒカリのHd16遺伝子のDNA配列の比較から、コシヒカリではDNA配列が1ヶ所変化し、その結果としてHd16タンパク質のアミノ酸配列が1ヶ所変化することを明らかにした。
  3. 日本晴のHd16タンパク質を人工合成して解析したところ、イネの日長反応性や出穂期制御に関係している「Ghd7タンパク質」をリン酸化することが明らかとなった(図2)。一方、コシヒカリのHd16タンパク質はGhd7タンパク質をリン酸化できなかった。コシヒカリではHd16タンパク質の働きが低下してリン酸化能力がなくなり、その結果として日長反応性が弱くなり、出穂期が早くなると考えられた。
  4. コシヒカリ型のHd16は野生種や国外のイネ品種には存在せず、日本のイネ品種にだけ存在していた(図3)。コシヒカリの系譜情報(イネ品種の家系図)と照合したところ、コシヒカリ型のHd16は100年前に誕生した山形県の在来品種「森多早生」から伝わっていた。
成果の活用面・留意点
  1. 今回特定したコシヒカリのHd16遺伝子を利用したゲノム育種によって、出穂期や収穫期を改変(早生化あるいは晩生化)でき、登熟期の高温や低温回避や作期分散による適期収穫などが可能になる。
  2. Hd16遺伝子は、日長反応の制御に重要な遺伝子であり、この遺伝子ならびに相互作用する遺伝子の解析は、出穂期の遺伝的調節機構の解明に貢献できる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027158
カテゴリ ゲノム育種 水田 品種

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