多収イネ品種の高い光合成速度に貢献する遺伝子を特定

タイトル 多収イネ品種の高い光合成速度に貢献する遺伝子を特定
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2008~2012
研究担当者 高井俊之
安達俊輔
田口文緒
荒井裕見子
岩澤紀生
吉永悟志
廣瀬咲子
谷口洋二郎
山内歌子
呉健忠
松本隆
杉本和彦
近藤勝彦
一家崇志
安藤露
河野いづみ
伊藤幸恵
正村純彦
大川泰一郎
平沢正
矢野昌裕
近藤始彦
山本敏央
発行年度 2013
要約 日本の多収イネ品種が持つ光合成速度を高める遺伝子を特定した。この遺伝子は葉の形態に関係し、光合成反応を行う葉肉細胞の数を増やすことで、光合成速度を向上させる。
キーワード ゲノム育種、光合成速度、量的形質、葉肉細胞
背景・ねらい 収量性は、大きく分けて2つの能力(光合成による炭水化物を作り出す能力=ソース能および炭水化物を貯蔵する能力=シンク能)によって決定され、その向上には両者をバランス良く高める必要がある。ゲノム遺伝学の進歩によって、シンク能を決定する遺伝子が次々と明らかになったが、その一方で、ソース能を高める遺伝子の報告例は少ない。日本で栽培されるイネ品種の中でトップレベルの生産能力を持つ品種「タカナリ」は、光合成能力が高い(ソース能が高い)、籾の数が多い(シンク能が高い)など、多収につながる複数の性質を持っている。本研究では、タカナリの「光合成能力の高さ」に寄与する遺伝子を特定し、その機能を明らかにした。
成果の内容・特徴
  1. 「タカナリ」と日本の代表的品種「コシヒカリ」を交配した系統を使い、マップベースクローニング法により、光合成速度を高める遺伝子GPSを特定した。
  2. GPS遺伝子は、葉の幅に関わる既知の遺伝子NAL1と同じ遺伝子であったが、タカナリ型のGPS遺伝子と既知のNAL1遺伝子(コシヒカリ型)の間には、複数のDNA配列の違いが見出された。遺伝子発現の抑制実験や、タンパク質定量実験、および詳細な葉の構造の調査を行った結果、タカナリ型のGPS遺伝子はNAL1遺伝子の作用がわずかに弱まった機能低下型であることが明らかとなった。
  3. タカナリ型のGPS遺伝子を持つコシヒカリ系統(コシヒカリGPS)と、コシヒカリ型のGPS遺伝子を持つタカナリ系統(タカナリGPS)を作成し(図1A)、タカナリ型のGPS遺伝子が光合成速度を高める効果があることを確認した(図1B)。
  4. コシヒカリGPSは葉が厚くなり、単位面積あたりの葉肉細胞の数が増え、逆にタカナリGPSでは葉が薄くなり、単位面積あたりの葉肉細胞数も減少したことから、葉肉細胞数の増加が光合成速度の向上の理由と考えられた。
  5. タカナリGPSの収量性はタカナリと比較して5%低下したことから、GPS遺伝子がタカナリの高い収量性に寄与していることが明らかとなった。一方、コシヒカリGPSでは収量に変化はなかった。
  6. 多収イネ品種の系譜におけるGPS遺伝子の伝搬について、塩基配列情報をもとに調べたところ、タカナリ型のGPS遺伝子配列は、インド型品種PetaやMudgoに由来し、1960年代の東南アジアにおける緑の革命に貢献した多収イネ品種「IR8」を経由して導入されたと推定された(図2)。 
成果の活用面・留意点
  1. GPS遺伝子は、タカナリの高いソース能と高い収量性に寄与する遺伝子であり、タカナリおよびその姉妹品種を母本とした多収イネのマーカー選抜育種において有用である。
  2. コシヒカリGPSでは収量性の向上効果は認められなかったが、これまでに特定された「シンク能を高める遺伝子」を含めた「GPS遺伝子との組み合わせによって収量を高める遺伝子」を同定し利用していくことで、今後、日本のイネ品種の収量向上に役立つと期待される。
  3. GPS遺伝子は光合成の複雑な仕組みを明らかにするための基礎研究の実験素材として有用である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027156
カテゴリ 育種 ゲノム育種 収量向上 GPS 品種

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