ソルガム根からの生物硝化抑制物質の分泌機構の解析

タイトル ソルガム根からの生物硝化抑制物質の分泌機構の解析
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究課題名
研究期間 2006~2010
研究担当者 Zhu, Y.
Zeng, H.
Shen, Q.
石川隆之
Subbarao, G.V.
発行年度 2013
要約 ソルガムの根からの硝化抑制物質の分泌には、根圏pH、アンモニウムイオン(NH4+)の取り込み、細胞膜H+-ATPアーゼ(ATPの加水分解エネルギーを利用してH+を細胞外へと輸送するタンパク質、プロトンポンプ)が大きく関わっている。低い根圏pHとNH4+の取り込みが硝化抑制物質の分泌を促進する。H+-ATPアーゼ活性促進により硝化抑制物質の分泌量は増加し、阻害により分泌量は減少する。
キーワード ソルガム、生物的硝化抑制物質、根圏pH、細胞膜H+-ATPアーゼ
背景・ねらい 植物が自身の根から物質を分泌して、ある種の土壌微生物の働きによるアンモニアから硝酸が生成される過程、すなわち硝化(硝酸化成)を制御することを「生物的硝化抑制」とよぶ。これは、植物が低濃度窒素環境に適応するために進化の過程で獲得した形質である。つまり、植物が分泌する硝化抑制物質は硝化菌のNH4+の消費を抑え、結果的に植物側の窒素吸収量は増加する。ソルガムは生物的硝化抑制能をもっており、アンモニウムイオン(NH4+)存在下で硝化抑制物質の分泌量は増加し、逆に硝酸イオン(NO3-)存在下では分泌量は減少する。しかし、根でのNH4+の取り込みから硝化抑制物質の分泌までの活性化機構の詳細は不明のままである。この機構を明らかにして、ソルガムでの生物的硝化抑制の実用化に際して考慮すべき情報とする。
成果の内容・特徴
  1. 水耕栽培のソルガムでは、窒素源としてNH4+を用いるとNO3-の場合よりも根からの硝化抑制物質の分泌量が増える。根圏pHを3.0にすると、どちらを窒素源としても7.0の場合よりも分泌量が多くなる(図1a)。
  2. 根の細胞膜H+-ATPアーゼ活性への窒素源の影響をみると、NH4+のほうがNO3-よりもどちらの根圏pH(3.0と7.0)でも高くなる。また、根圏pHの影響を比較すると、3.0ほうが7.0の場合よりもH+-ATPアーゼ活性はどちらの窒素源でも高くなる(図1b)。
  3. 上記条件下では細胞膜H+-ATPアーゼ活性と硝化抑制物質の分泌との間には高い正の相関があり、NH4+による分泌促進効果はH+-ATPアーゼ活性の増大と強く関係している(図2)。
  4. 水耕栽培での根分け法を用いてソルガムの根の半分それぞれにH+-ATPアーゼの活性促進物質のフシコクシンと阻害物質のバナジン酸を作用させると、硝化抑制物質の分泌とH+-ATPアーゼ活性は両者とも各物質の効果に対応して促進あるいは阻害される(図3)。このことは、細胞膜H+-ATPアーゼが硝化抑制物質の分泌に重要な役割をもっていることを示している。
  5. 以上より、ソルガムでの硝化抑制能物質の分泌機構は次のように推定される。NH4+が根細胞内へと取り込まれて同化された後に形成されるH+は、活性化された細胞膜H+-ATPアーゼにより細胞外へと排出される。細胞質内の負のポテンシャルが増大して、細胞膜のアニオンチャネルを通して硝化抑制物質が細胞外へと分泌される(図4)。 
成果の活用面・留意点
  1. ソルガムによる硝化抑制物質の分泌が低pHの根圏条件で促進されることから、ソルガムがもつ生物的硝化抑制能を有効に活用するための情報として利用する。半乾燥熱帯地域のAlfisols(土壌pH 6以下)、南アメリカのUltisols(土壌pH 5以下)、西アフリカのSandy-loams(土壌pH 6以下)のような軽埴土でソルガムの生物的硝化抑制能が発揮されやすいと考えられる。
  2. 強い生物的硝化抑制能をもつソルガムの実用的品種開発において有効な情報となる。 
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027134
カテゴリ 乾燥 水耕栽培 ソルガム 品種開発 輸送

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