太平洋クロマグロの全遺伝子情報を解読、クロマグロは微妙な青緑色の違いを認識

タイトル 太平洋クロマグロの全遺伝子情報を解読、クロマグロは微妙な青緑色の違いを認識
担当機関 (独)水産総合研究センター 中央水産研究所
研究課題名
研究期間 2009~2013
研究担当者 中村洋路
斉藤憲治
馬久地みゆき
菅谷琢磨
重信裕弥
尾島信彦
藤原篤志
安池元重
大原一郎
小林敬典
中島員洋
佐野元彦
発行年度 2013
要約 太平洋クロマグロ(以下 「クロマグロ」)の遺伝情報全体の解読に取り組み、成功しました。解読結果の解析により視覚にかかわる遺伝子にクロマグロの特徴を発見しました。これは、高速で泳ぎ回るクロマグロが、海中で微妙な青緑色の違いを認識できることを示唆します。本成果は、クロマグロの行動特性に関する基礎的な知見であり、今後のまぐろ養殖生産技術の改善にもつながります。
背景・ねらい 太平洋クロマグロ(以下「クロマグロ」、図1)の持続的な利用を図るため、資源管理の取り組みが進められつつあります。また、クロマグロ養殖の拡大に対応するため、人工種苗の安定生産技術の確立も重要な課題です。このため、クロマグロについて、一層の科学的知見の充実が急がれています。そこで、東京大学、九州大学および国立遺伝学研究所と共同で、クロマグロの全遺伝子情報であるゲノムの全ての塩基配列の解読に取り組みました。
成果の内容・特徴 延べ数にして推定ゲノムサイズ(約8億塩基対)の50倍以上に相当する配列を解読し、約7億4千万塩基対の配列にまとめることができました(図2)。

 得られた遺伝子の配列情報を基に、網膜で発現する視覚系の遺伝子に着目し、紫外光、可視光(赤、青、緑)、および明暗を感知するためのオプシン遺伝子を見つけました。これらの遺伝子を詳細に解析したところ、緑色や青色の知覚に関するオプシン遺伝子に1000万-1億年前に大きな進化が起きた痕跡がありました(図3、4)。緑オプシン遺伝子数の増加により、クロマグロはより微妙な青~緑色の違いが認識できるようになったと考えられます。

 さらに緑色と青色の遺伝子のそれぞれで、数千万年ほど前に遺伝子変換が起きた形跡があり、遺伝子によって翻訳されるタンパク質のアミノ酸配列が急速に変化した可能性が示唆されました。こうした進化が起きた時期は、サバ科もしくはその下位のマグロ属魚類が出現した時期と重なっており、クロマグロとその仲間が青色に富んだ海洋の表層に適応するための分子レベルでの適応戦略の一つではないかと考えられます。
成果の活用面・留意点 魚食性魚であるクロマグロの行動特性に関する基礎的な知見を与えるものであり、養殖生産における飼育技術の改善にもつながることが期待されます。さらに、クロマグロの全ゲノムが解読されたことで、視覚以外の生物学的特性の把握や育種技術への活用が見込まれます。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027077
カテゴリ 育種 飼育技術

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