低温熱源である堆肥発酵熱を回収して温水へ変換するシステム

タイトル 低温熱源である堆肥発酵熱を回収して温水へ変換するシステム
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究課題名
研究期間 2011~2012
研究担当者 小島陽一郎
阿部佳之
天羽弘一
発行年度 2012
要約 吸引通気式等の発酵排気を直接回収可能な堆肥化施設において、アンモニアを化学的に除去した排気を潜熱回収型熱交換器に導くと、排気熱量のうち最大77%を回収して水の加温に利用できる。搾乳牛120頭規模の施設では40℃の温水が11.5t/日得られる。
キーワード 畜産環境、家畜ふん尿、堆肥化、潜熱回収、発酵熱、温水
背景・ねらい 家畜ふん尿の堆肥化処理では、微生物の分解により堆肥温度は70℃程度まで上昇し、水蒸気とアンモニアを含んだ発酵排気が多量に発生するが、工業系の排気に比べ低温であるため、これまで熱の回収が難しかった。排気を外気で希釈せず直接回収する吸引通気式等の堆肥化施設では、排気中のアンモニアを化学的に除去することで、排気を熱源として利用できる。そこで、潜熱回収型の熱交換器を用いて、排気で水を加温するシステムを開発し、実規模施設での現地実証によりその性能を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 発酵排気を発酵槽底面から直接回収する吸引通気式や密閉型の堆肥化施設において、排気中の高濃度のアンモニアガスを酸性の薬液で中和・回収した後、潜熱回収型熱交換器に導入して排気中の熱を回収し温水を得ることができる(図1)。
  2. 搾乳牛120頭規模の実証農家に設置した吸引通気式堆肥化施設では、オガクズ、バーク、戻し堆肥を副資材として、原料含水率70%,w.b.に調整している堆肥原料を15t/日処理しており、吸引通気される堆肥原料ののべ容積は240m3である。アンモニアを薬液で回収した後の排気は、温度45~50℃、相対湿度約100%、流量は7m3/分であり、排気の持つ熱量は約2.6GJ/日(30kWに相当)である。
  3. 発酵排気は低温かつ高湿度な熱源であるため、潜熱回収型の熱交換器を使用する(図1)。48℃の排気と8℃農業用水との熱交換過程では、熱交換器の総括伝熱係数は80~90W/(㎡・K)程度で収束し、熱交換器に導入される排気の熱量のうち最大77%が水の加温に用いられる(図2)。
  4. 前項と同条件下では、1~14L/分の通水量において、温水温度は48~31℃となる。例えば約40℃の温水であれば一日あたり11.5t得られ、水の加温に使用される熱量は18.5kWとなる(図3)。この熱量は一ヶ月あたりA重油1.23kLに相当し、A重油の価格を90円/Lとすると、一ヶ月あたり11万円の節減が期待される。
  5. 実証施設では熱量30kW(=125W/原料m3)相当の排気が得られるが、副資材や含水率等の堆肥化条件によって、熱量68~249W/原料m3相当の排気の回収が見込める(データ略)。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:本システムは、得られた温水を、家畜への温水給与、給水配管の凍結防止対策、畜舎の暖房および殺菌・洗浄・消毒用途における高温水の熱源利用等により、経営の省エネルギー化に取り組む生産者向けの成果である。
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:国内、国外を問わず吸引通気式堆肥化施設や密閉型堆肥化装置等、排気を直接回収できる方式の堆肥化施設で利用可能であり、現在までに酪農家や企業に対して、3件の販売実績がある。
  3. その他:本熱回収システムは共同研究機関の(有)岡本製作所で販売している(参考価格200万円程度)。また、本システムは、アンモニア回収装置を併設し、アンモニア液肥と発酵熱の両方を利用する。なお、熱交換に伴って生じる結露水は、畜舎内でのリサイクル利用や放流が可能である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010026840
カテゴリ 経営管理 省エネ・低コスト化 乳牛

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