衛星からのレーザー観測と高分解能衛星画像により熱帯林の構造とバイオマスを測る

タイトル 衛星からのレーザー観測と高分解能衛星画像により熱帯林の構造とバイオマスを測る
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 平田 泰雅
齋藤 英樹
松浦 俊也
発行年度 2013
要約 熱帯林での森林劣化を広域で把握するため、衛星からのレーザー観測による森林の3次元構造をとらえる手法と、高分解能衛星画像を用いて広域で森林バイオマスを推定する手法を開発しました。
背景・ねらい 熱帯林の減少・劣化の防止が有効な温暖化対策の一つとして注目されており、そのモニタリングのために熱帯林の構造やバイオマス(生物現存量)を広域で計測する技術が必要です。本研究では、人工衛星からのレーザーが森林で反射するパターンを調べ、森林の3次元構造を捉える技術を開発しました。また、林冠を構成する各樹冠を数m以下の地上分解能で観測できる高分解能衛星を用いて、林冠における太陽光の反射に関する情報とともに、林冠を構成する一本一本の立木の樹冠が作り出す太陽のあたる部分と影の部分のコントラストの情報(肌理)や地形の特徴を捉えることで、地上調査では難しい広域での森林のバイオマスを施業履歴の違いを反映しつつマッピングすることが可能となりました。
成果の内容・特徴

熱帯林の観測の必要性

東南アジアの熱帯低地の生産林では、高い価値のある大きな木の抜き切り(択伐林施業)により森林劣化が進行しています。択伐林では、大きな樹木の伐採に加え、搬出のために多数の木が伐採され作業道が林内に作られて、これらの影響で森林の構造(樹木の大きさ別の本数や分布)が変化し、バイオマスが減少しています。このような熱帯林の劣化が地球温暖化の一因と考えられていますが、従来の衛星観測でわかりやすい森林の農地転用などと異なり、その把握は困難でした。熱帯林の劣化を防止するためには、森林の構造とバイオマスを広域で把握する技術の開発が求められています。

衛星LiDARによる森林構造の把握

衛星LiDARはレーザーを用いた計測技術で、衛星から照射された近赤外のレーザー光が林冠表面から地表面に到達するまでの間に反射してくるまでの時間と反射の強さを計測することにより森林の3次元構造を推定することができます(図1)。とりわけ、各階層の林冠からの反射の強さを観測できることから、森林の高さの情報に基づいて森林劣化の度合いを評価することが期待されています。そこで、反射の強さを高さごとにプロットした散布図を作成し、地上での1本ごとの樹木の調査結果と比較し、レーザー光の反射強度の波形が森林劣化の状態によりどのように変化するのかを調べました。その結果、成熟した森林では林冠層が高い位置にあるため観測波形のピークの位置も高く、択伐が進んで劣化した森林では林冠層がまばらになるため観測波形のピークの位置も低くなることがわかりました(図2)。この結果を用いて、地上調査では労力がかかりすぎる熱帯林における劣化の状態を宇宙から広域で判別できるようになりました。

高分解能衛星画像による森林バイオマスの推定

高解像度の衛星画像では一つの樹冠に複数の画素(衛星から地表面を観測する最小単位)が含まれることがあるため、林冠の特徴の類似性を考慮した画像解析法が有効です。林冠の太陽光の反射の平均や散らばりに関する情報とともに林冠の凹凸が作り出す肌理や斜面の位置などの地形の特徴を分析し、現地調査で求めたバイオマス量との関係を比較しました。その結果を用いて、地上調査では難しい広域でのバイオマスを、施業履歴の違いを反映しつつマッピングすることが可能になりました(図3)。
熱帯林の構造やバイオマスを推定し、モニタリングする技術は、持続的に森林を管理・保全する上で欠かせない技術です。ここで開発した技術は、途上国の森林資源管理やREDDプラス(森林保全による排出削減活動)を実施するために必要な森林モニタリングに活用できます。

本研究は、環境省環境研究総合推進費「熱帯林のREDDにおける生物多様性保護コベネフィットの最大化に関する研究」による成果です。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010026683
カテゴリ 温暖化対策 モニタリング

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