ヒメトビウンカの海外飛来はイネ縞葉枯ウイルスの分子系統解析からも支持される

タイトル ヒメトビウンカの海外飛来はイネ縞葉枯ウイルスの分子系統解析からも支持される
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
研究課題名
研究期間 2009~2010
研究担当者 大貫正俊
酒井淳一
松倉啓一郎
大塚 彰
真田幸代
周益軍
松村正哉
発行年度 2011
要約 九州に発生するイネ縞葉枯ウイルス(RSV)は江蘇省など中国東部に発生するRSVと分子系統学的に強い類縁関係が認められることから、保毒ヒメトビウンカが中国東部から九州へ飛来することが強く示唆される。
キーワード ヒメトビウンカ、海外飛来、イネ縞葉枯ウイルス、塩基配列、分子系統解析
背景・ねらい 九州ではイネ縞葉枯病が突発的に多発生し問題となっている。これまで本病は、国内で越冬する土着性ヒメトビウンカにより媒介されると考えられてきた。Otuka et al.(2010)は2008年の九州を中心とした西日本での本病の多発生の原因が同年6月に中国江蘇省から飛来したヒメトビウンカであることを飛来個体群の後退軌道解析やイミダクロプリドに対する感受性の低下から推定している。これをさらに裏付けるため、九州で採集したヒメトビウンカおよび罹病イネ由来のRSVと中国東部で採集したRSVおよび既報の中国のRSVの類縁性について分子系統学的解析を行い、九州および中国東部で発生しているRSVには、強い類縁関係があることを示す。
成果の内容・特徴
  1. 供試した日本および中国東部のRSVをゲノムRNA3にコードされるヌクレオカプシドタンパク質(N)遺伝子の塩基配列を比較対象として分子系統学的解析を行うことにより、分子系統樹上で2つのクラスターに大別することができる(図1)。また、ゲノムRNA3のタンパク質をコードしない遺伝子間領域(IR3)を比較対象とした場合も同様の結果が得られる(データ省略)。
  2. N遺伝子およびIR3の塩基配列に基づく分子系統樹では、江蘇省など中国東部で採集したヒメトビウンカ由来のRSVを含むクラスター(CH)に九州で採集した海外飛来性ヒメトビウンカ由来のRSVが含まれる。九州で採集されたヒメトビウンカおよび罹病イネ由来のRSVはすべてクラスター(CH)に含まれるのに対し、関東のRSVは別のクラスター(JK)に含まれる(図1)。
  3. 供試した日本および中国東部のRSVは、N遺伝子のアミノ酸配列に基づく分子系統樹でも、塩基配列に基づく分子系統樹と同様にCHと JKの2つのクラスターに大別することができる(データ省略)。クラスターJKに含まれる関東のRSVのN遺伝子のアミノ酸配列はいずれも178番目、236番目、242番目および303番目のアミノ酸がクラスターCHに含まれるRSVと比較して共通の変異を有している(図2)。
  4. 以上の結果は、九州のRSVが中国東部のRSVと分子系統学的に強い類縁関係を有するのに対し、関東のRSVとは遺伝的背景が異なることを示している。このことは、Otuka et al.(2010)の報告とあわせてヒメトビウンカの中国東部からの飛来を強く支持している。
成果の活用面・留意点
  1. 今後、ヒメトビウンカの飛来予測技術の開発とあわせてイネ縞葉枯病の防除対策への活用が見込まれる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010026622
カテゴリ 縞葉枯病 ヒメトビウンカ 防除

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