ジャガイモシストセンチュウふ化促進物質の全合成ならびにそのふ化活性

タイトル ジャガイモシストセンチュウふ化促進物質の全合成ならびにそのふ化活性
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究課題名
研究期間 2010~2011
研究担当者 奈良部孝
谷野圭持
発行年度 2011
要約 ジャガイモの根由来のふ化促進物質ソラノエクレピンの全合成に成功し、精製物3.8mgを得た。この合成品は1ppb(10-9g/ml)レベルの低濃度でジャガイモシストセンチュウの卵から幼虫を60%程度ふ化させる顕著なふ化促進活性が認められる。
キーワード ジャガイモシストセンチュウ、ふ化、生理活性物質、全合成、防除
背景・ねらい 北海道の産地を中心にジャガイモシストセンチュウの被害が拡大し、基幹作物であるジャガイモ生産の大きな阻害要因となっている。高度耐久性を持つ本線虫の防除法として、ふ化促進物質の有効性が指摘され、20年以上前にジャガイモの根由来のふ化促進物質solanoeclepin A(ソラノエクレピン)が同定されたものの、化学構造が複雑なため、これまで人工的には合成ができなかった。そこで、新たな合成法を開発して人工合成を目指すとともに、得られた合成品の線虫に対するふ化活性を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 市販の化合物から出発し、合計52回の合成反応を行ってソラノエクレピンA(図1)の全合成(生物の力を借りず全ての反応を人工的に行なう合成)を達成した。精製物の収量は3.8mg、製品化率は0.18%であった。
  2. この合成品の希薄水溶液中でジャガイモシストセンチュウの卵を培養すると、1ppbレベルのごく低濃度で、卵から幼虫をふ化させる顕著なふ化促進活性が認められる(図2)。すなわち、試験管とフラスコの中で人工的に合成したこの物質は、ジャガイモが産生したものと同じ機能を有する。
  3. この合成品の希釈溶液中でのふ化活性のピーク濃度は10-9g/mlであり、それより高濃度でも低濃度でも徐々に活性が落ちる。この合成品単独でのふ化率の最大値は60%程度であり、天然のふ化促進物質を含むトマト水耕栽培の廃液のふ化率(最大約80%)よりやや低い(図3)。
  4. この合成品は土壌中のシスト内に存在する卵に対して、十分なふ化促進効果を有する。線虫汚染程度が中程度の圃場土壌100gあたり10-8g/ml溶液を15ml加え、22℃で5週間ほど放置すると、トマト水耕栽培の廃液と同様に、土壌中のシスト内全卵のほぼ半数がふ化する。一方、水を加えた場合では同約2%程度しかふ化しない(図4)。圃場10aあたりに換算すると、このときの合成品の散布量は約0.3gと見積もられる。
成果の活用面・留意点
  1. ジャガイモを栽培していないときに本合成品を圃場に散布することで、ジャガイモシストセンチュウの卵を一斉にふ化させ、餓死させることができる。これにより、他の生物には影響を与えない環境調和型の防除が実現できるものと期待される。
  2. 本合成品を実際に圃場で防除に使用するためには、農薬登録が必要である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010026561
カテゴリ 水耕栽培 トマト 農薬 ばれいしょ 防除

この記事は