蛍光指紋によるパン生地中のグルテン・デンプン分布の可視化

タイトル 蛍光指紋によるパン生地中のグルテン・デンプン分布の可視化
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究課題名
研究期間 2008~2011
研究担当者 杉山純一
蔦 瑞樹
藤田かおり
鍋谷浩志
粉川美踏
発行年度 2011
要約 蛍光指紋計測とイメージング技術を組み合わせた「蛍光指紋イメージング手法」を開発し、パン生地中のグルテン・デンプン分布を可視化した。これまで可視化が困難であった生体由来の物質や成分も、蛍光指紋で判別ができれば可視化につなげることができる。
キーワード 蛍光指紋、励起蛍光マトリクス、イメージング、類似度
背景・ねらい 製パン時の品質に重要な影響を与えるパン生地ミキシング時の各成分の分布状態の解明には、これまで染色による観察が試みられている。しかし、操作の煩雑さ、試料へのアーティファクト、定量性等、様々な問題点が残されていた。そこで、光による非接触計測に着目し、新たな可視化手法を開発した。通常の蛍光は、ひとつの励起光に対する1本の蛍光スペクトルであるのに対し、蛍光指紋は、励起光を変化させながら、その応答である複数の蛍光スペクトルを集積した3次元データ(図1)である。これは物質に固有の形状を示すため、様々な物質の同定に用いられる。これをさらに発展させ、画素ごとに蛍光指紋を測定できる蛍光指紋イメージング装置を開発し、各画素に対して、物質を同定するアルゴリズムを適用することにより、パン生地中のグルテンとデンプンの分布を可視化する。
成果の内容・特徴
  1. 蛍光指紋イメージングは、蛍光指紋計測をイメージングに拡張した手法で、励起光側と蛍光観察側の両方にフィルタの切り替え機構を持つ蛍光指紋イメージング装置(図2)により、画素単位で蛍光指紋を取得する。事前に測定された教師試料であるグルテンあるいはデンプンの蛍光指紋とパン生地の各画素における蛍光指紋との類似度を計算し、その類似度に対応した擬似カラーを割り当てる。
  2. 上記の蛍光指紋イメージング手法を用いて、画素毎にパン生地中のグルテン・デンプンの存在確率を同定し、その分布を可視化したものが図3右である。
  3. 同じ試料部位に対する染色画像(図3左)との比較から、両者は類似したパターンを示していたが、蛍光指紋イメージングは、染色むらや染色液の浸透性などの影響がないため、コントラストの高い画像が得られ、また、各画素におけるグルテンとデンプンの存在割合は補完関係(グルテン+デンプン=1の関係)にあることも明らかになり(文献1)、可視化結果は妥当なものであると評価できる。
  4. ミキシング途中のさまざまなパン生地に本手法を適用したところ、図4の結果が得られ、最適なパン生地は、グルテンとデンプンがよく混ざり、かつ、大きな気泡が少ないことが可視化により、明確に示されている。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象 本手法はパンに限らず生体由来の成分分布及び物質の検知・同定・定量等に使えるため、食品に係る分析評価部門、機器開発メーカー、大学・研究機関で普及が期待される。
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 イメージング装置3台、蛍光分光光度計3台が本技術の推進に稼働中である。
  3. その他 イメージング計測は、分布の可視化が特徴であるがコストと手間がかかる。一方、蛍光分光光度計(現在、日立ハイテクF-7000、日本分光FP-8500の2機種のみ測定可能)による1点測定であれば、低コスト・短時間の計測が可能である。普及に向けて、現場ではどちらを目的としているかで、両者を使い分けることが重要である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010026544
カテゴリ カラー 機器開発 コスト 低コスト

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