水稲収量の大気CO2濃度反応における品種・窒素依存性のモデルシミュレーション

タイトル 水稲収量の大気CO2濃度反応における品種・窒素依存性のモデルシミュレーション
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究課題名
研究期間 2010~2011
研究担当者 吉田ひろえ
堀江 武
中園 江
大野宏之
中川博視
発行年度 2011
要約 大気CO2濃度の上昇による水稲収量の増加率が、品種・窒素施肥条件によって異なる機構と要因についてのモデル解析を行った。品種特性または多窒素施肥により現在大気CO2条件下で籾数が大きい場合に、CO2増による収量の増加率が大きいことが予測される。
キーワード 作物モデル、気候変動、高[CO2]、窒素施肥水準、品種間差
背景・ねらい 水稲の大気CO2濃度([CO2])応答には、品種・環境条件により大きな差異があることが明らかにされているが、その差異の生じるプロセス・要因が総合的に理解されるには至っていない。本研究は、高[CO2]に対する水稲の生長・収量反応について、窒素(N)施肥量および品種によって増収率に差異の生じる機構と要因を、水稲モデルを用いて解析的に明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 水稲生育・収量モデルによる予測では、アジアの多様な品種・気象条件(表1)を平均して、高[CO2]による水稲収量の相対増加率( [CO2]700ppm下の粗籾収量/[CO2]360ppm下の粗籾収量)は、全生育期間のN施肥量が多いほど大きくなる。一方、 高[CO2]による地上部乾物重の相対増加率には、大きなN依存性は認められない(図1)。
  2. 360、700ppmの両[CO2]条件下で、籾数と一粒重の積であるシンク容量がN施肥量の増加に伴い直線的に増大するのに対し、出穂期に茎葉に蓄積される非構造性炭水化物量と登熟期間の乾物生長量の和であるソース量は、12gm-2以上のN施肥量の増加に対し頭打ち、ないしは減少することが予測される(図2)。
  3. 図2の結果から、低N条件下での高[CO2]による収量の相対増加率は、制限となるシンク容量の相対増加率に依存する。一方、高N条件下での収量の相対増加率は、ソース量の相対増加率に依存する。
  4. 現在[CO2]下で単位面積当たり籾数が大きい品種ほど、高[CO2]による収量の相対増加率が高い(図3)。
  5. 水稲収量の[CO2] 応答の品種・N施肥条件による差異は、現在[CO2]条件下でのシンク・ソースバランスによって決まっており、現在[CO2]下でシンクないしは籾数が大きいほど、収量の相対増加率が大きくなる (図2、3)。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果は、気候変動に適応した品種または育種戦略を策定するための基礎的知見となる。
  2. 籾数・炭水化物動態に対する[CO2]およびN施肥量の影響を考慮した水稲モデルシミュレーションは、栽培試験との協働によって、温暖化・高[CO2]下で品種に応じた施肥水準を設定するための解析手法となる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010026346
カテゴリ 育種 水稲 施肥 品種

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