天然テルペノイドであるスクラレオールはサツマイモネコブセンチュウ感染を抑制する

タイトル 天然テルペノイドであるスクラレオールはサツマイモネコブセンチュウ感染を抑制する
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究課題名
研究期間 2011~2011
研究担当者 水久保隆之
藤本岳人
瀬尾茂美
発行年度 2011
要約 ジャスモン酸を処理したトマトの根からネコブセンチュウ侵入抑制効果を持つ単一有効物質を抽出できる。有効物質は既知天然テルペノイドのスクラレオールであり、植物ホルモンのエチレンシグナル伝達系を介して線虫に作用している。
キーワード サツマイモネコブセンチュウ、ジャスモン酸、テルペノイド、スクラレオール
背景・ねらい 植物は昆虫、線虫、病原菌などの外敵の摂食・寄生に対し様々な防御戦略を使い分けているが、植物に寄生するネコブセンチュウに対する植物の防御戦略の様相はほとんど解明されていない。ネコブセンチュウの幼虫の寄主植物への定位には植物から放出される物質が関与するとされ、ジャスモン酸を処理したトマトの数種の植物遺伝子の発現はネコブセンチュウの根への侵入抑制と相関している。ジャスモン酸を処理したトマト根でみられた線虫侵入抑制は、ジャスモン酸によって誘導された「線虫の侵入を抑制するいくつかの物質」による効果である可能性が示唆されるため、これらの物質を単離・同定し、それらの特性並びに作用機作を解明する。
成果の内容・特徴
  1. ジャスモン酸を処理したトマトの根から酢酸エチルを用いて極性ごとに物質の分画・抽出を行い、各画分を供試した植物におけるネコブセンチュウの侵入数を評価すると、中性画分と酸性画分に有意なネコブセンチュウの侵入抑制効果が見られる(図1)。
  2. ネコブセンチュウ侵入抑制効果を持つ中性画分の分画を繰り返し、その都度、得られた画分を植物に供試し、ネコブセンチュウを接種してその侵入数から効果を評価することにより、強いネコブセンチュウ侵入抑制効果を持つテルペノイドであるスクラレオール(C20H36O2)が単離される。
  3. ネコブセンチュウ侵入抑制に対するスクラレオールの有効処理濃度は100μM以上であり、処理から2日以上経過するとネコブセンチュウ侵入抑制効果が発現する(図2A、B)。
  4. スクラレオール類縁体であり天然由来のスクラレオライド(C16H26O2)には、同上処理条件でネコブセンチュウ侵入抑制効果がないことから、ネコブセンチュウ侵入抑制効果はスクラレオールに特異的であることが示唆される(図3)。
  5. シロイヌナズナの各種植物ホルモン伝達経路欠損変異体(サリチル酸・ジャスモン酸・エチレン・アブシジン酸)においてスクラレオール処理によるネコブセンチュウの侵入数を評価すると、エチレン欠損変異体でのみ侵入抑制効果が認められないことから、スクラレオールがエチレンシグナル伝達系を介して線虫に作用していることが明らかである(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. スクラレオール放出・産生量を制御する植物の遺伝子の特定は、ネコブセンチュウ抵抗性品種の育種に応用できる可能性がある。
  2. スクラレオールを直接ネコブセンチュウ防除に利用するためには、有効濃度や処理方法の検討が必要である。
カテゴリ 育種 抵抗性品種 トマト 防除

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