水田放牧のリスクマネジメント

タイトル 水田放牧のリスクマネジメント
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究課題名
研究期間 2006~2011
研究担当者 千田雅之
村上賢二
小西美佐子
亀山健一郎
中村義男
花房泰子
発行年度 2011
要約 水田放牧には、放牧管理者の怪我等のリスク、家畜自体のリスク(転落等の事故、栄養低下、熱射病等)、地域農業や地域社会に影響を与えるリスク(牛脱柵による農作物盗食や交通事故等)があり、各リスク顕在化の要因を考慮した放牧管理が必要である。
キーワード 水田放牧、リスクマネジメント、肉牛、飼料イネ、イネWCS
背景・ねらい 水田を有効活用し畜産経営の改善をはかる有力な技術として、水田放牧の普及が期待されている。しかし、放牧に伴う怪我や事故のリスク、周囲に及ぼす影響への不安から放牧を躊躇する農家も少なくない。そこで、営農試験地で得られた経験をもとに、水田放牧のリスクを分析して、リスクの顕在化を回避・低減する方策等を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 水田放牧には、放牧管理者の怪我等のリスク、家畜自体のリスク(転落等の事故、栄養低下、熱射病、中毒症、疾病感染)、地域農業や地域社会に影響を与えるリスク(放牧草地由来の病害虫による作物被害、放牧牛の脱柵による農作物の盗食や交通事故等)がある(表1)。
  2. リスク顕在化の頻度は多くないが、顕在時の影響は入退牧時の管理者の怪我や脱柵に伴う交通事故では経営に大きな損害を及ぼすことが考えられる。そのほかのリスクは、侵入した圃場の野菜被害、牛個体レベルでの事故等であり、一度の事故の被害金額は多くても50万円程度にとどまる(表1)。
  3. リスク顕在化の要因を放牧管理場面と関連づけて整理すると、管理者の怪我や牛の事故は牛の入退牧、捕獲移動時に発生することが多い。放牧牛の栄養低下や熱射病は採食行動に不慣れな初放牧牛や猛暑時に発生しやすい。中毒症や脱柵事故は放牧飼料の乏しい冬季に発生しやすい。疾病感染は媒介昆虫の多い夏季放牧時に伝播しやすい(表1)。
  4. リスクの回避・低減には表2に掲げるような放牧管理を行う。1)注意を要する個体の認識と捕獲移動時の注意の喚起、追い込み柵等捕獲施設の設置、捕獲時の人手確保と捕獲訓練、運搬車や誘導柵による牛の移動(ア、イ、クのリスク対策)。2)放牧経験牛との同群放牧による初放牧牛の馴致、日陰林のある里山と組み合わせた放牧地の確保、用水の掛け流しによる牛の体温上昇の抑制、ミネラルと水分の十分な補給(ウ、エの対策)。3)可食飼料の十分な確保と野菜残渣等の搬入自粛の伝達(オの対策)。4)入牧前の感染症検査と感染牛の放牧自粛または分離放牧、日常観察による疾病等の早期発見と適切な対応、感染力の強い口蹄疫の関係機関への迅速な連絡と殺処分体制の準備、消毒の徹底や部外者の立ち入り禁止措置など高い防疫意識の保持(カの対策)。5)住居近接圃場での放牧自粛、牧草の出穂を抑制する放牧管理(牧草の掃除刈りや定置放牧)(キの対策)。6)「牛飛び出し注意」等の看板設置、台風や降雪後の牧柵点検、捕獲時に興奮して脱走しやすい牛の放牧自粛(クの対策)。
成果の活用面・留意点
  1. 水田放牧実施時のリスク認識として、実施者、普及指導者の活用が期待される。
  2. 茨城県常総市の営農試験地において、通年約50頭(5~10群)の繁殖牛の水田周年放牧を5年間継続する中で得られた情報(放牧延べ頭数約73,000日頭、退牧および測定のための捕獲約700頭)に基づく。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010026324
カテゴリ 害虫 経営管理 水田 肉牛 繁殖性改善

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