飼料イネ専用品種タチアオバによる水田冬季放牧技術

タイトル 飼料イネ専用品種タチアオバによる水田冬季放牧技術
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究課題名
研究期間 2007~2011
研究担当者 千田雅之
石川哲也
松山裕城
的場和弘
発行年度 2011
要約 茎葉型の飼料イネ専用品種タチアオバの茎葉TDNは冬季でも高く、晩植、出穂期追肥、ストリップ放牧により、水田10aあたり180日頭以上の牛の放牧飼養が可能であり、耕種農家の冬季就農機会確保と畜産農家の家畜飼養の省力化が図れる。
キーワード 飼料イネ、タチアオバ、出穂期追肥、繁殖牛、ストリップ放牧、冬季放牧
背景・ねらい 水田を有効活用し家畜飼養の省力化をはかる有力な技術として水田放牧が普及しつつある。しかし、牧草に依存した季節放牧では冬期飼料の制約から規模拡大がはかれないなど経営改善効果は限定的である。そこで、飼料イネを活用した冬季放牧技術を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 現地圃場で6月上旬に移植し出穂時にN4kg/10aの追肥を行ったタチアオバは、黄熟期以降、籾と茎葉合計で乾物1900g/㎡前後の生産量が得られ、冬季でも倒伏せず可食草量はほとんど低下しない。12月上旬の粗蛋白(CP)は慣行施肥よりも1.7ポイント高く、茎葉の非繊維性炭水化物(NFC)は黄熟期以降増加し、1月の可消化養分総量(TDN)は約53%と慣行の稲わらより10ポイント以上高い(表1)。
  2. 晩植・出穂期追肥によりタチアオバを栽培した現地圃場約24aで、維持期の肉専用種繁殖牛および乳用種乾乳牛をストリップ方式により放牧すると、採食ロスは13.2%と低く、補助飼料なしで12月9日から2月1日まで延べ449頭の放牧が可能であり、10aあたり放牧実績は191頭ときわめて高い。放牧牛の体重および血液性状を、放牧開始後1か月間で比較すると、平均体重は22kg増加し、血液中の総コレステロール値(Tch)も増加するなど、栄養状態は良好である。飼料イネの蛋白成分が約5%と低いため、総蛋白値(TP)は、やや低下するが基準値の範囲内である(表2)。
  3. 飼料イネを栽培する耕種農家が収穫調製を委託してイネWCSとして販売するケースと畜産農家の牛を預託放牧し料金を受け取るケースとで生産量に応じた収益を比較すると、預託放牧では自ら放牧管理作業に従事することで、イネWCSの収穫委託・販売よりも収益は10aあたり3~4万円程度増加する。また、飼料イネの圃場生産量が多いほど、放牧預託の収益が多くなり、飼料増産(単収増加)のインセンティブも働きやすい(図)。
  4. 畜産農家ではイネWCSの購入利用と比べて立毛放牧委託の方が費用を要するが、給餌と排せつ物処理作業が大幅に削減できる。繁殖牛50頭で試算すると1日あたり費用増加6,600円に対して、労働時間は7時間節減されるため、労賃単価を940円/時以上と評価する場合は、立毛放牧委託の方が経営的に有利になる。さらに、冬季にも牛舎に空きが生じるため、家畜の増頭など経営発展が可能になる(表3)。
成果の活用面・留意点
  1. 冬季降水量が少ない太平洋側地帯のWCS用稲の収穫機械を保有しない農家、冬季放牧ニーズの高い畜産農家への活用が期待される。
  2. 現行の農業者戸別所得補償制度において、飼料イネのWCS利用と放牧利用の間で補助金の格差があることに留意する必要がある。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010026323
カテゴリ 規模拡大 経営管理 収穫機 省力化 水田 施肥 肉牛 乳牛 繁殖性改善 品種 放牧技術

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