タイトル |
作物の重要病害である青枯病を抑える天然物質の同定 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究課題名 |
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研究期間 |
2008~2012 |
研究担当者 |
瀬尾茂美
五味剣二
加来久敏
安部 洋
瀬戸秀春
中津信吾
閨 正博
小林光智衣
中保一浩
一瀬勇規
光原一朗
大橋祐子
水久保隆之
藤本岳人
森脇明弘
高垣真喜一
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発行年度 |
2012 |
要約 |
病害抵抗性反応が誘起されたタバコから青枯病を抑える物質としてジテルペン化合物である「スクラレオール」と「cis-アビエノール」を単離した。これらの物質を与えると、トマトは青枯病、タバコは立枯病にそれぞれ強くなった。これらの物質の抑制効果が発揮されるための作用機序は既知のプラントアクチベーターのそれとは異なることがわかった。
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キーワード |
重要病害、青枯病、プラントアクチベーター、天然物質、環境保全型農業
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背景・ねらい |
「プラントアクチベーター」とは病原体に直接作用せず、植物の病害抵抗性を高めることで防除効果を発揮する物質であり、環境保全型の病害防除資材として注目が集まっている。しかし、既知のプラントアクチベーターの多くはイネいもち病など一部の病気にしか効かない。今まで有効な防除法がなかった病害に対して効果を有する新たな抵抗性誘導物質を見出すことができれば、応用的価値は極めて高い。そこで本研究では、難防除病害である青枯病(タバコの場合、病名は立枯病となる)をモデルとして、新たなタイプのプラントアクチベーターを見つけることを目的とした。
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成果の内容・特徴 |
- 新たな物質の探索源として、病原体に対する植物の感染防御応答のひとつである過敏感反応に着目した。過敏感反応では植物ホルモンや抗菌性物質などが多数生産される。そのような代謝産物のなかから目的の物質を迅速かつ効率的に探索するために、タバコ幼植物と試験管内抵抗性検定法を組み合わせたハイスループット探索法を新たに構築した。本法では成熟体を用いた従来法と比較して半分以下の期間で検定が終了し20倍以上の検体数を処理できる。本法を用いて、過敏感反応が誘起されたタバコから調製した約1,000個の有機溶媒画分中に立枯病抑制活性を示す画分3つを見出し、そのうち最も高活性を示した2つから有効成分としてスクラレオールとcis-アビエノールを単離同定した(図1)。
- スクラレオールとcis-アビエノールはタバコのみならずトマトやシロイヌナズナの青枯病に対しても抑制効果を示した(図2)。スクラレオールとcis-アビエノール自体は青枯病菌(立枯病菌)に対する殺菌活性を示さなかった。これらのことから、スクラレオールとcis-アビエノールにみられた抑制効果は直接的な抗菌作用に因るものではなく、植物内で起きた抵抗性反応に因るものであると考えられた。
- 類縁体を用いた構造活性相関試験により炭素8位の水酸基が活性発現に重要であることがわかった。
- スクラレオールとcis-アビエノールによる立枯病・青枯病抑制には、サリチル酸やジャスモン酸系とは独立した、エチレンやアブシジン酸などが部分的に関与する新たなシグナル伝達経路が介在することが示唆された。
- スクラレオールは植物寄生性ネコブセンチュウによって引き起こされるトマトの被害も抑える効果を示した(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 今回構築した改良型の抵抗性検定法は、別の植物を材料としても有効であると期待される。
- 過敏感反応が誘起された植物を材料として用いることにより、今回見出した物質以外にも新たなプラントアクチベーター様物質が見つかる可能性がある。
- スクラレオールやcis-アビエノールよりも高活性の物質の合成を試みる。得られた高活性品は立枯病・青枯病やセンチュウに効く防除剤のリード化合物になると期待される。
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カテゴリ |
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抵抗性
抵抗性検定
トマト
病害抵抗性
防除
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