健全種子を生産し更新を確保するための熱帯有用樹種セラヤの繁殖特性

タイトル 健全種子を生産し更新を確保するための熱帯有用樹種セラヤの繁殖特性
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究課題名
研究期間 2005~2015
研究担当者 谷 尚樹
津村義彦
田口由利子
新山 馨
大谷達也
八木橋勉
深澤啓太
角 友之
Soon Leong Lee
Chai Ting Lee
Norwati Muhammad
Abdul Rahman Kassim
Azizi Ripin
発行年度 2011
要約 マレーシアの丘陵フタバガキ林の優占種で主要な林業樹種であるセラヤについて、一斉開花時に遺伝子解析によって種子の父親を決定した。繁殖モデルを開発して同樹種の花粉散布距離の短さおよび小径木の花粉生産性の低さを明らかにした。これらをもとに健全な交配により生存力の高い種子を確保し更新を維持するための択伐技術を提案した。
キーワード 丘陵フタバガキ林、花粉散布、花粉生産力、他家受粉、択伐
背景・ねらい マレーシアの林業では、択伐により一定の幹直径(50cm)以上の大きな木だけが伐採されるが、木材収穫後多くの林で次世代を担う生存能力の高い健全な稚樹が得られないという問題が生じている。こうした原因の一つとして、伐採跡へ種子が散布されにくいことが明らかになっているが、本研究課題では残された親木間の距離が大きく花粉が届かないために健全な種子ができないこと、さらに残された細い木が十分な量の花粉を生産していないことも一因ではないかと考えた。そこで遺伝マーカー解析により、丘陵フタバガキ林の代表的林業樹種であるセラヤ(Shorea curtisii)の、花粉散布距離とパターン、及び樹木の幹の直径と花粉親としての貢献度の関係を明らかにし、森林管理行政部局に対し健全な種子生産を促進して更新維持に適した択伐技術を提案することを目的とした。
成果の内容・特徴
  1. 伐採が進む丘陵フタバガキ林の代表樹種セラヤについて、天然林試験地の全成木と一斉開花時に採取した種子の遺伝子型をそれぞれ決定し、各種子の花粉親を同定した(父性解析)。
  2. 父性解析の結果をもとに花粉散布の距離による減少確率をモデル化し、花粉散布の平均距離が約60mと非常に短いことを明らかにした(図1)。直径50cm以上の立木を収穫する現行の択伐方式では、残された立木間の距離が大きいため、散布距離の短いセラヤ花粉は他の個体に到達しにくい。残される親木間の距離を短くすることは、伐採跡への種子の散布量を増やすだけでなく、受粉を促進して健全種子を生産することでも更新に貢献する。
  3. 花粉親の幹直径と花粉生産量との関係から、択伐後に残される小径木(直径50cm以下)は殆ど花粉を生産していないことを明らかにした(図2)。花粉生産量が少ないため、択伐林では他家受粉による健全な種子がほとんど生産できない。
  4. 花粉生産量の多い中径木(幹直径70cmから90cm)を保存すると、伐採前の50%程度の花粉が他家受粉を達成し、効率よく健全種子の生産を確保して更新維持に貢献できる。
成果の活用面・留意点
  1. セラヤの花粉の散布距離や幹直径と花粉生産量の関係などの繁殖特性を明らかにし、他家受粉を確保して健全な更新を維持するために択伐基準について改良すべき点を、連邦及びセランゴール州政府森林局へ提示した。
  2. 花粉散布や繁殖動態は種毎に異なることが予想されるので、他の林業樹種への応用には留意が必要である。他の林業樹種の繁殖特性を明らかにし、さらに類似の特性を持つ樹種群に適応範囲を拡張させた指針として森林管理行政に反映させていくことが重要である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010026076
カテゴリ 受粉 繁殖性改善

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