48年間の茶害虫データが示す明確な世代分割 ―長期害虫データを使って生態学上の命題に挑む―

タイトル 48年間の茶害虫データが示す明確な世代分割 ―長期害虫データを使って生態学上の命題に挑む―
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 山中武彦
内村浩一郎
発行年度 2011
要約 48年間のチャノコカクモンハマキ誘蛾灯捕殺データを統計解析し、季節性を示す年周期と世代の分割を示す世代周期を検出しました。世代周期が現れる主な要因として、幼虫期の競争と成虫の老化による短い生殖期間が、最もよく現象を説明しました。
背景・ねらい 動物の長期センサスデータの中で、一つ一つの世代がはっきりとした個体数のピークを形成する現象を「世代分割」と呼び、個体数制御のメカニズムを読み解く鍵とされてきました。20世紀初頭から多くの生態学者が、世代分割現象の解明に取り組んできましたが、その多くは、室内や熱帯など、気温が安定している条件下で行われてきました。本研究では、特殊な変数変換を使って温帯の季節性の問題を克服し、鹿児島県の48年間5日間隔で記録された茶害虫が示す世代分割の再現に成功しました。
成果の内容・特徴 チャノコカクモンハマキは、茶の主要な害虫であり、防除適期を決定するためのモニタリング調査が継続して行われています(図1)。今回、鹿児島県において48年間5日間隔で記録された誘蛾灯捕殺データを使って、「世代分割」メカニズムの解明に取り組みました。
まず、捕殺数が記録されたカレンダーの日付を、積算温量に替わる特殊な変換法によって昆虫の成長に合わせた時間軸に変換しました(図2A)。変換した時系列データを周期性解析した結果、世代分割に対応する世代周期と、1年間に相当する季節性の2つの主要な変動周期が検出されました(図2B)。特に世代周期は、48年間を通して強く検出され、幼虫期の競争など世代分割を生み出すメカニズムの存在を暗示しています(図2C)。
さらに、卵→幼虫→蛹→成虫の各成長過程を考慮した個体数変動に関するシミュレーションモデルを構築し、(1)低密度で交尾相手がいなくなる影響、(2)幼虫期の餌資源を巡る種内競争、(3)成虫が老化することで生殖期間が短くなる効果、(4)寄生蜂の影響、(5)越冬態(幼虫だけが越冬できる)、の5つのメカニズムの働きを野外データと比較して検証しました(図3)。その結果、1.幼虫期の競争と短い成虫生殖期間が組み合わさって世代分割を強力に持続させていること、2.これに幼虫だけが越冬できる効果が加わることで世代分割と年変動が組み合わさった実際の野外の発生パターンが実現すること、が示唆されました。この解析手法は、温帯に生育する様々な生物種に応用が可能です。
農業環境技術研究所では、日本国内で蓄積されてきた昆虫データを収集し、情報資源として整備を進めています。今後、様々な害虫について、気候変動や土地利用変化など主要な外的要因をシミュレーションモデルに組み込むことによって、防除適期の予測だけでなく、発生量の予測や防除手段の効果を評価するなど、応用面での活用も期待できます。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010026060
カテゴリ 害虫 防除 モニタリング

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