カイコの「2眠蚕」変異体で早熟変態が起きる原因を解明

タイトル カイコの「2眠蚕」変異体で早熟変態が起きる原因を解明
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2011~2011
研究担当者 大門高明
古崎利紀
古田健次郎
並木俊樹
瀬筒秀樹
小林功
内野恵郎
三田和英
田村俊樹
嶋田透
勝間進
丹羽隆介
伴野豊
糸山享
中山真義
篠田徹郎
発行年度 2011
要約 カイコの幼虫脱皮回数の変異体である「2眠蚕」の原因遺伝子が、幼若ホルモン合成に必須のエポキシダーゼCYP15C1遺伝子であることを明らかにした。「2眠蚕」では、幼若ホルモンを生合成することができないために、本来5齢で蛹に変態するはずの幼虫が、3齢または4齢で早熟変態してしまうことがわかった。
キーワード カイコ、幼若ホルモン、変態、制御剤
背景・ねらい 通常、カイコの幼虫は4回の幼虫脱皮を行ない、5齢幼虫になった後に蛹へと変態する。ところが、カイコの突然変異の1つである「2眠蚕(dimolting, 遺伝子記号mod )」は、幼虫脱皮を2回または3回しか行わず、3齢あるいは4齢幼虫で変態し、小さなままで蛹や成虫になってしまう(図1)。このことは、「2眠蚕」では幼虫脱皮と変態との切り替えのタイミングに異常が生じていることを意味し、その原因を明らかにすることにより、昆虫の脱皮と変態の分子機構解明の重要な手がかりが得られるとともに、その分子をターゲットとする新規の昆虫制御技術の開発へと繋がるものと期待された。そこで、カイコの全ゲノム情報や遺伝子組換え技術を利用して、この変異体の原因遺伝子を同定し、その機能を解明した。
成果の内容・特徴
  1. カイコの全ゲノム情報を用いたポジショナルクローニング法によって、「2眠蚕」変異体の原因遺伝子を同定したところ、「2眠蚕」変異体ではCYP15C1という遺伝子が壊れており、正常に機能していないことが判明した。
  2. CYP15C1タンパク質の酵素活性を調べたところ、CYP15C1は重要な昆虫ホルモンである幼若ホルモンの生合成に必須なエポキシダーゼであることが明らかになった(図2)。
  3. 「2眠蚕」変異体の体内には幼若ホルモンが全く検出されなかったが、遺伝子組換え技術を用いて、「2眠蚕」変異体に正常型の(=壊れていない)CYP15C1遺伝子を導入したところ、正常なカイコと同様に幼若ホルモンを作り、4回脱皮を行なって大きな5齢幼虫に成長し、正常な蛹へと変態した(図3)。
  4. 以上のことから、「2眠蚕」変異体は、幼若ホルモンを作ることが出来ないために、4齢幼虫、5齢幼虫へと大きく成長することができず、小さいまま蛹へ変態してしまうことが明らかになった。
  5. 幼若ホルモンは、脱皮ホルモンが働いて脱皮するときに幼虫形質を維持するために必要なホルモンと考えられているが、カイコでは、幼若ホルモンがなくても3齢または4齢まで幼虫形質が維持されることが明らかになった。このことは、若齢期の幼虫形質の維持には、幼若ホルモン以外の要因が働いている可能性を示唆している。
成果の活用面・留意点
  1. 幼若ホルモンは、脱皮と変態の切り換えをはじめ、昆虫の成長や生殖に重要な働きをしているが、その作用機構はほとんど分かっていない。カイコの「2眠蚕」は、世界で初めて見つかった幼若ホルモンをつくることができない昆虫の変異体であり、今後、幼若ホルモンの働きを調べる上で重要な材料になるものと考えられる。
  2. 本研究の成果は、CYP15C1が昆虫の成長制御剤のターゲット分子として有望であることを示唆しており、新たな害虫の制御法の開発へとつながることが期待される。また、カイコやミツバチなどの益虫の脱皮や変態を人為的にコントロールすることで、機能利用を高度化するための技術開発へとつながることが期待される。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010026040
カテゴリ カイコ 害虫 ミツバチ

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