森林の枯死木、リター、土壌の炭素蓄積量の全国調査

タイトル 森林の枯死木、リター、土壌の炭素蓄積量の全国調査
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 金子 真司
田中 永晴
鵜川 信
南光 一樹
発行年度 2011
要約 森林における枯死木、リター(落葉)、土壌の炭素量の全国調査を行い、地域別に炭素蓄積量を比較しました。炭素蓄積量は気温の影響が大きく、また土壌の乾燥や過去の森林利用も関係していることを明らかにしました。
背景・ねらい 森林には、樹木の幹や枝葉や根だけでなく、枯死木や林床に堆積した落葉落枝(リター)や土壌にも多くの炭素を蓄積しています。地球温暖化対策のため、これらの炭素蓄積量を把握することが求められています。そこで枯死木やリターや土壌の炭素蓄積量の全国調査を行いました。その結果、わが国のリター炭素蓄積量はIPCCが報告する湿潤暖温帯地域に比べて少ないことが明らかになりました。地域別の比較では、枯死木、リター、土壌とも寒い地方は暖かい地方に比べて炭素蓄積量が大きく、気温が炭素蓄積に大きく関係すると考えました。ただし乾いた土壌が広く分布する中国地方でリター炭素蓄積量が多かったことや、長期に森林が利用されてきた近畿地方で土壌炭素蓄積量が少ないことから、土壌の乾湿や森林利用歴なども炭素蓄積に関係すると考えられます。
成果の内容・特徴

地球温暖化と土壌

森林は、樹木の幹や枝葉や根だけでなく、枯死木や林床に堆積した落葉落枝(リター)や土壌にも多くの炭素が蓄積しています。これらの炭素は気象条件や森林の状態などで変化するため、地球温暖化対策にとって、その炭素蓄積量を正確に把握することが重要です。しかし、枯死木やリターについての調査事例は少ない上に、土壌の炭素蓄積量についても昭和30~40年代の古いデータが多く、最新の炭素蓄積量を把握する必要があります。そこで、わが国の森林の枯死木、リター、土壌の炭素蓄積量の実態を明らかにするために、都道府県や民間企業の協力を得て初めての全国調査を行いました。

調査の方法

この調査は、全国の森林に均等に配置された約2,500か所で、平成18~22年の5年間に行いました(図1)。調査地点は直径36mの円形プロットです(図2)。枯死木は、南北、東西の直径ライン上にある倒木と根株の大きさと腐朽度から炭素蓄積量を推定しました。リターは外周上の東西南北の4地点で、一定面積(0.25㎡) からリターを採取し炭素含有量を測定して炭素蓄積量を求めました。土壌はリターと同じ地点で、簡易土壌断面を作成して深さ0-30cmの石礫割合を記録するとともに、土壌試料を採取し、炭素含有量と乾燥密度を測定して炭素蓄積量を求めました。

炭素蓄積の実態

データの精査が終了した平成18~21年までの4年間を対象に解析した結果、枯死木、リター、土壌の平均炭素蓄積量は、それぞれ0.406、0.517、6.85kg m-2でした。IPCC(2003)による集計では、湿潤暖温帯林のリター炭素蓄積量は1.3~2.2kg m-2とされているので、わが国のリター炭素蓄積量はこの気候帯の森林としては少ないことが明らかになりました。さらに地域別に枯死木、リター、土壌の炭素蓄積量を比較したところ、枯死木は北海道から九州にかけて低下する傾向にあり、リターも北海道・東北は四国・九州に比べて高く、土壌も関東以北の地域で高い傾向にありました(図3~5)。寒冷な地域では温暖な地域に比べて有機物の分解が進みにくいことから、炭素が多く蓄積したと推定されます。ただしリターの蓄積量は中国地域で最も高く、土壌では、近畿地域が最も低い特徴がみられました。中国地方はこれまでの研究から、乾性タイプの土壌が多いので、乾燥の影響で有機物分解が遅れリターが多量に蓄積している可能性があります。また近畿地域は長期間過度に森林が利用された地域であり、そのため土壌炭素量が低かったと考えられます。

本調査は、枯死木、リター、土壌のすべてを対象にした初めての全国調査であり、得られたデータは京都議定書に対応した報告の検証など地球温暖化対策に広く利用されています。本研究は、「予算区分:政府等受託、課題名:森林吸収量把握システムの実用化に関する研究」による成果です。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010025992
カテゴリ 温暖化対策 乾燥

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