シイタケのひだ褐変化に関わるラッカーゼ遺伝子の染色体上での位置の決定

タイトル シイタケのひだ褐変化に関わるラッカーゼ遺伝子の染色体上での位置の決定
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 宮崎 和弘
坂本 裕一
発行年度 2010
要約 シイタケの収穫後のひだの褐変化は、シイタケの商品価値を著しく下げるため、褐変化のしにくい品種を育成することが求められます。そこで、シイタケのひだの褐変化に影響するラッカーゼ遺伝子の染色体上での位置を決定しました。
背景・ねらい スーパーなどで販売されている生シイタケは、日数の経過とともにひだ部分が褐変化して商品価値が下がっていき、最終的には売り物にならず廃棄されてしまいます。このひだの褐変化を遅らせることが出来れば、生シイタケ商品の日持ちが長くなり、販売上のロスを減らすことにつながります。この収穫後のひだの褐変化は、品種間で差がみられることが観察されており、すでにラッカーゼ酵素が関与していることが報告されています。そこで、より日持ちのよいシイタケ品種を効率的に作っていくことを目的として、シイタケの染色体上にひだの褐変化に関わるラッカーゼ遺伝子を位置づけました。
成果の内容・特徴 シイタケの収穫後の褐変化については、品種間で差が見られます(図1)。これまでの研究により、このシイタケのひだの褐変化には、ラッカーゼ*と呼ばれる酸化酵素の一種が関与していることが分かっています。そこで日持ちのよいシイタケの開発を効率的に行うため、シイタケの生産するラッカーゼ遺伝子の染色体上での位置を決定することとしました。現在までにDNA配列が解析されている4種類のシイタケのラッカーゼ遺伝子(lcc1lcc4)のDNA配列情報を基に、それぞれのラッカーゼ遺伝子増幅に用いるプライマー*を設計しました。次に、そのプライマーを用いて胞子菌株の各ラッカーゼ遺伝子の一部を増幅し、一本鎖DNAのとる二次構造の違いにより多型を検出するSSCP*という解析法で、各遺伝子の分離パターンの解析を行いました(図2)。既報のシイタケの連鎖地図*のデータと照合し、各ラッカーゼ遺伝子の連鎖地図上の位置を決定しました。そうすると、図3に示しましたように、lcc1lcc4は異なる連鎖群 (LG) に位置することが分かりました。つまり、lcc1lcc4は同じラッカーゼ活性をもつ酵素の遺伝子にも関わらず、染色体上の位置には関係がないといえます。この結果から、今後ラッカーゼ活性の異なるシイタケを育種する上では、lcc1lcc4の各遺伝子の集積を行うことは比較的簡単であることが判明しました。また、シイタケのひだの褐変化には、特にこの中のlcc4が強く関わっていることから、今後、褐変化の違いに関係している、lcc4遺伝子配列の品種間での違いを特定し、褐変化しにくい品種の早期検定技術の開発につなげていきたいと考えています。

ラッカーゼ遺伝子の位置づけに使用した連鎖地図に関する情報については、Miyazaki et al. (2008) Genetic map of a basidiomycete fungus, Lentinula edodes (shiitake mushroom), constructed by tetrad analysis., Breeding Science、58:23-30をご参照ください。

*ラッカーゼ
ラッカーゼ(laccase) は、フェノール類を酸化する能力を持つ酸化酵素の一種です。白色腐朽菌が分泌するラッカーゼは、木本植物のリグニン分解などに関与していることが知られています。
*プライマー
DNAポリメラーゼを用いて、染色体等に存在する遺伝子の一部分を増幅するPCR法の増幅起点となるDNA断片です。
*SSCP (Single Strand Conformation Polyomorphysm、一本鎖高次構造多型)
DNA断片の多型解析手法の一種です。高温処理により熱変性させたDNAが分子内で水素結合により高次構造を形成する際に、塩基配列の違いにより高次構造に違いが生じることを利用し、遺伝子の変異や多型を検出する手法を指します。
*連鎖地図
染色体上の近い位置に存在する遺伝子間では、メンデルの独立の法則に従わず、減数分裂の際に一緒に行動する傾向があり、この現象を連鎖と呼びます。連鎖地図は、この遺伝子間の連鎖を利用して作成された染色体地図の一種です。連鎖する遺伝子の一群を、連鎖群(LG: Linkage Group) と呼びます。十分な数の遺伝子(マーカー遺伝子を含む)で構成された連鎖群は、そのまま染色体に対応します。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010025979
カテゴリ 育種 しいたけ 品種

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