野生ダイズのアルカリ塩耐性QTLの同定と選抜マーカーの開発

タイトル 野生ダイズのアルカリ塩耐性QTLの同定と選抜マーカーの開発
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究課題名
研究期間 2009~2010
研究担当者 許 東河
Do Duc Tyuen
発行年度 2010
要約 日本由来の野生ダイズ系統「JWS156-1」は非常に高いアルカリ塩耐性を示す。QTL解析では、第17染色体に効果の大きな量的形質遺伝子座(QTL)が認められる。このQTLは既往の塩化ナトリウム塩耐性に関与するQTLとは異なる。それぞれのQTLに隣接するDNAマーカーの利用により、アルカリ塩耐性と塩化ナトリウム塩耐性の両方を同時に目的とする遺伝的背景へ集積することが可能になる。
キーワード 野生ダイズ、アルカリ塩耐性、QTL、DNAマーカー
背景・ねらい ダイズ(Glycine max)栽培における塩害は、開発途上国の乾燥・半乾燥地域においてしばしば報告され、近年は、気候変動に伴う降雨量の減少や灌漑不良により塩類集積地が世界的に拡大しつつある。塩類土壌は、主に塩性土壌、アルカリ土壌、アルカリ-塩性土壌の3種類に分類され、中国のダイズの主産地である東北地域では、アルカリ土壌が問題になる。耐性品種の育成は有力な対応策であるが、耐塩性は遺伝的に複雑な形質で、評価と選抜は容易ではない。これまでに、塩性土壌の要因となる塩化ナトリウム塩(NaCl)耐性については、ダイズ遺伝資源が広範に評価され、関与するQTLが第3染色体に特定、そのDNAマーカーが開発されている。一方で、アルカリ塩耐性に関する知見は極めて少なく、本研究では、野生ダイズ(G. soja)に由来するアルカリ塩耐性のQTLを同定し、育種に利用できるDNAマーカーを開発する。
成果の内容・特徴
  1. 世界各国の栽培ダイズ51品種および日本の野生ダイズ2系統のアルカリ塩耐性の検定では、日本由来の野生ダイズ系統「JWS156-1」は最も高い耐性を示す(図1、2)。
  2. アルカリ塩耐性の低い栽培ダイズ品種「Jackson」と「JWS156-1」の交雑に由来する組換近交系統(RIL)F6集団における230個のSSRマーカーからなる全長3278.7cMの連鎖地図のQTL解析では、効果の大きいQTL(寄与率50.2%)が第17番染色体に見出される(図3)。同じ交雑組合せのF2分離集団においても、同じ領域に耐性QTLの存在が確認される(図3)。
  3. アルカリ塩耐性QTLは、今までに検出されたNaCl塩耐性QTLと異なる染色体領域に位置し、アルカリ塩耐性とNaCl塩耐性は、異なる遺伝的制御を受けている。
成果の活用面・留意点
  1. 同定されたアルカリ塩耐性QTLと関連するSSRマーカーSatt669、Satt447、Sat_292(Song et al. 2004 Theor. Appl. Genet. 109: 122–128)は、DNAマーカー育種に利用できる。
  2. DNAマーカー選抜より、アルカリ塩耐性遺伝子とNaCl塩耐性遺伝子を任意の遺伝的背景へ集積することが可能である。
  3. 野生ダイズ系統「JWS156-1」は、栽培ダイズ品種のアルカリ塩耐性の改良を行うために有望な遺伝資源であり、そのアルカリ塩耐性の機構を解明する必要がある。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010025676
カテゴリ 育種 遺伝資源 乾燥 大豆 DNAマーカー 品種

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