タイトル |
血圧調整米の開発 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究課題名 |
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研究期間 |
2008~2010 |
研究担当者 |
若佐雄也
廣瀬咲子
楊麗軍
吉川正明
高岩文雄
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発行年度 |
2010 |
要約 |
高血圧時特異的に血圧降下能を有するノボキニンペプチドを可食部(胚乳)に蓄積させた遺伝子組換えイネを作出した。この組換え米を先天性高血圧ラットに経口投与したところ、有意な血圧降下作用を示した。継続投与により必要量が減少し、さらに有効持続時間が延びることを明らかにした。
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キーワード |
イネ、遺伝子組換え作物、高血圧、ノボキニンペプチド
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背景・ねらい |
食生活や生活スタイルの欧米化から、高血圧、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病の患者数の増加により国民医療費も増加し続けている。また、人口の23.1%を65歳以上の高齢者が占め(2010年の統計)、本格的な超高齢化社会に突入している。今後も増え続けることが予想される医療費を出来る限り低減するためには、これまでの治療を中心とした医療だけではなく、予防に重点を置いた医療が極めて重要となる。主食である米に生活習慣病の予防や緩和機能を付与することで、毎日の食事を通しての健康維持・増進を図ることを可能にし,疾病予防に役立てることが期待できる。ノボキニンペプチドは、卵白アルブミン由来のオボキニンを高機能化した、6アミノ酸からなるペプチド(RPLKPW:アルギニン-プロリン-ロイシン-リジン-プロリン-トリプトファン)であり、動脈弛緩作用を介して高血圧時特異的に血圧降下能を有する。本研究では、ノボキニンペプチドを可食部に発現する血圧調整米の開発を目指した。
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成果の内容・特徴 |
- イネ胚乳にノボキニンペプチドを蓄積させる為、図1に示すような導入遺伝子コンストラクトを作製した。ノボキニンをより高蓄積させるため、10もしくは18連結することで1遺伝子あたりのノボキニンのコピー数を増やした。
- 組換えイネ種子中の導入遺伝子産物(ノボキニン)の蓄積を確認したところ、転写産物は両者とも同程度に発現しているにもかかわらず、ノボキニンの蓄積は18連結型のみに見られた(図2a,b)。18連結ノボキニン最高蓄積系統では、種子1gあたりおよそ85μgのノボキニンが蓄積していた。サザンブロット解析から、導入T-DNA数は2コピーと推定された(図2c)。
- 組換え種子細胞中におけるノボキニンの蓄積部位を調べたところ、核内に集積していた。GFP融合型18連結ノボキニンの発現コンストラクトを作製し、タマネギ表皮細胞を用いた一過的発現実験を行った結果、連結型ノボキニンのアミノ酸配列には、核移行シグナルが存在することが示唆された。
- 先天性高血圧ラットに、組換え種子粉末を経口投与した。体重1kgあたり0.25gの単回投与で、投与後4時間目をピークとした有意な血圧降下作用が認められた(図3)。
- 7週にわたる長期経口投与試験をおこなったところ、単回投与の1/4量の0.0625gで有効性を示し、1日中血圧上昇が抑えられた(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- モデル動物を用いた本研究から明らかになったノボキニン蓄積米の有効性は、体重60kgのヒトが毎日1回15~30g摂取する量に相当し、十分血圧を調整することが可能と期待される。また炊飯しても効果が失われないこと、通常の血圧のラットでは血圧降下作用がないことから安全上問題はなく、実用化が可能と思われる。
- 現在、血圧調整米の実用化を目指し、選抜マーカー遺伝子をイネゲノム由来の選抜マーカー遺伝子に変更した良食味のノボキニン蓄積米を作出しており、この組換えイネについて、カルタヘナ法に準じた第1種生物多様性影響評価試験等を進めていく予定である。
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カテゴリ |
たまねぎ
良食味
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