時系列データ分析による農業用コンクリートダムの浸透水量の長期挙動評価

タイトル 時系列データ分析による農業用コンクリートダムの浸透水量の長期挙動評価
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究課題名
研究期間 2009~2010
研究担当者 中嶋(浅野)勇
田頭秀和
林田洋一
増川 晋
発行年度 2010
要約 農業用ダムの挙動観測値に対して、外れ値を考慮した重回帰分析、隣接移動平均等による長期挙動評価、データ分布を考慮した分析を行うことにより、ダム固有の挙動を客観的かつ簡易に評価することができる。
キーワード 農業用コンクリートダム、浸透水量、挙動観測、挙動評価
背景・ねらい 農業用ダムは、事故が発生した場合の周囲に及ぼす影響が格段に大きく、十分な安全管理が必要とされる。ダムの安全を監視するために、埋設計器等により継続して挙動観測が行なわれているが、計測データが膨大であること、計測データの評価手法や安全性評価のための客観的な管理基準値等の設定法が定まっていないことなどから、現場技術者は挙動評価に多くの労力を費やしている。本課題は、これらの問題を解決するために、農業用コンクリートダムの浸透水量を対象に複雑な作業を必要とせずかつ客観的な評価が可能な時系列解析手法を探索し、その適用性を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 挙動評価では外れ値を考慮した観測値の分析が重要である。コンクリートダムの総浸透水量を対象にした外れ値分析の手順を図1に示す。(a) 外れ値の抽出:総浸透水量と貯水位の関係をグラフ化し、95%確率楕円を目安に楕円の外側に位置する外れ値を抽出する。(b) 外れ値の評価:総浸透水量の経時グラフから外れ値の分布を確認する。外れ値はダムの試験湛水開始から約1年間の観測データであり、浸透水の挙動が湛水初期とその後で異なることが分かる。(c) 回帰分析:外れ値を除外して重回帰分析を行うことにより再現性の良い回帰式を得ることができる。このように外れ値の分析を行うことにより、ダム固有の挙動特性を明らかにすることができる。
  2. ダムの長期的な挙動評価のためには観測値の平均値とばらつきの経時変化を分析する必要がある。図2に示す(A) 移動平均法および(B) パーセントフィルタ法(観測値の95%が含まれる分位値を抽出)等の平滑化処理を観測値に施すことにより観測値の平均挙動およびばらつきの範囲の経時変化を視覚的かつ簡易に判別することができる。
  3. ダムの挙動評価では挙動観測値の分布型を考慮した分析が重要である。コンクリートダムの総浸透水量のヒストグラムを図3に示す。総浸透水量が多峰型の分布を示す場合は、多峰型の原因を探索(例えば右岸、左岸の浸透水量に分離)し挙動評価を実施することが必要である。観測値の正規分布へのあてはまりが悪い場合は、必要に応じて分布の代表値およびばらつきの統計量として平均値および標準偏差の代わりに中央値および四分位範囲(中央値±25%の範囲)を用いることにより実際の観測値の分布を考慮した挙動評価が可能となる。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果はフィルダムの挙動観測評価に対しても適用可能である。また、複数のダムを対象とし、平滑化処理による長期挙動評価を行うことによりダムの挙動が安定に至る時期の把握が可能となる。
  2. 95%確率楕円、観測値の分布を分析するなど実際の統計解析を行う際には統計解析ソフトウェアの活用が望まれる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010025369
カテゴリ 安全管理

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