トマトにおける特定の遺伝子発現はネコブセンチュウの侵入を抑制する

タイトル トマトにおける特定の遺伝子発現はネコブセンチュウの侵入を抑制する
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究課題名
研究期間 2008~2010
研究担当者 水久保隆之
藤本岳人
津田新哉
冨高保弘
発行年度 2010
要約 ナス科植物のトマトにジャスモン酸メチルを噴霧処理した後、3日以内にネコブセンチュウを接種すると、根内部へ侵入する線虫数が減少する。侵入数の抑制効果は約1週間持続し、効果が消える頃のジャスモン酸メチルの再処理は侵入数の抑制を回復させる。このときプロテアーゼインヒビター1等の特定遺伝子が発現している。
キーワード ネコブセンチュウ、トマト、ジャスモン酸メチル、プロテアーゼインヒビター
背景・ねらい ネコブセンチュウは寄主範囲が広く、露地根菜類から施設果菜類におよぶ広範な作物に著しい減収や枯死を起こすこと、侵入すると根絶が難しいことから、難防除病害虫の一つとされている。ジャスモン酸メチルを散布した植物では食葉性昆虫による摂食害が軽減されることが知られるが、茎葉が昆虫による摂食を受けた場合、植物体内ではストレスホルモンであるジャスモン酸メチルが生産され、それがシグナル伝達物質として機能し、速やかな防御反応が誘起される。ネコブセンチュウも植物の根を傷つけて根内部へと侵入するため、植物体内で同様の防御応答が誘起されている可能性がある。そこで、植物地上部の害虫に対する防御応答と似た現象が地下部の線虫に対しても生じているものと仮定し、ジャスモン酸メチルを散布した植物における線虫の侵入反応を観察するとともに線虫の侵入に影響を及ぼす植物遺伝子の探索を行う。
成果の内容・特徴
  1. ジャスモン酸メチル(以下MeJA)を0.5~5.0mMの濃度でトマトの茎葉部に噴霧処理すると、根内へ侵入するサツマイモネコブセンチュウ(以下線虫)の個体数が有意に減少する(図1)。0.1mMの散布濃度では侵入個体数は減少しない。
  2. MeJAを植物に噴霧処理した1時間後から3日後までの期間に線虫を株元に接種すると、線虫の侵入が抑制される(図2)。
  3. MeJAを噴霧処理したトマトの線虫の侵入抑制効果はおよそ1週間持続する。しかし、抑制効果が低下した時点で再度MeJAを茎葉部に噴霧処理すると線虫の侵入抑制の効果が回復する(図3)。
  4. MeJAを処理したトマトの根のプロテアーゼインヒビター1(図4)、プロテアーゼインヒビター2、マルチシスタチン(データ省略)などの遺伝子の発現と線虫侵入数の減少とは相関している(図4)。
  5. 上記の遺伝子は、ネコブセンチュウ抵抗性品種(桃太郎)と感受性品種(福寿2号)の両方で発現し、従来のネコブセンチュウ抵抗性遺伝子とは関連がない(データ省略)。
成果の活用面・留意点
  1. ジャスモン酸系路の誘導抵抗性は茎葉部だけで知られていたが、地下部でも発現していることを世界で初めて明らかにした成果である。
  2. MeJAの処理で活性化されたジャスモン酸系路において生産されるネコブセンチュウの侵入抑制物質を探索できる可能性がある。
カテゴリ 害虫 抵抗性 抵抗性遺伝子 抵抗性品種 トマト なす 品種 防除

この記事は