RSISを用いた簡便な遺伝子発現抑制法

タイトル RSISを用いた簡便な遺伝子発現抑制法
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2006~2009
研究担当者 高岩文雄
保田浩
若佐雄也
川勝泰二
発行年度 2009
要約 RNAサイレンシングを誘導する配列(RSIS)を標的遺伝子の一部と連結して発現させることによって標的遺伝子の発現を抑制することができる。
キーワード イネ、遺伝子発現抑制、mGLP-1、siRNA
背景・ねらい 遺伝子発現抑制法は、遺伝子の機能解析といった基礎研究だけでなく、代謝制御による高付加価値作物の開発などの応用研究においても広く利用されている。ヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は血糖値に依存してインスリン分泌を促進するし、糖尿病に有効と考えられている。このGLP-1を一部改変したmGLP-1をイネ胚乳中に蓄積させるため、胚乳のみで発現するグルテリン(GluB-1)プロモーターとターミネーターの間にmGLP-1遺伝子を挿入し形質転換した。ところが、mGLP-1が蓄積しないだけでなく胚乳中のGluB-1の発現が抑制された。本研究ではmGLP-1を任意の遺伝子の一部と連結して発現させることでその遺伝子の発現が抑制されるか検証し、新規の遺伝子発現抑制法として利用できるかどうかを明らかにすることを目指した。
成果の内容・特徴
  1. mGLP-1をイネ胚乳中に発現させるために、胚乳のみで発現するグルテリンGluB-1プロモーターおよびGluB-1遺伝子の一部とGluB-1ターミネーターの間にmGLP-1遺伝子を連結したコンストラクト(GluB less)を作成しイネに導入したところ、形質転換体ではGluBファミリーの発現が抑制されていた(図1)。
  2. mGLP-1遺伝子を連結する配列を様々な部位(胚乳、胚、葉、根)で発現する他の遺伝子由来の配列に置換すると、それらの遺伝子の発現を抑制することができた(図1)。mGLP-1の塩基配列から制限酵素認識配列を除去しても遺伝子の発現抑制効果に差は無く、その配列をRSIS(RNA silencing inducible sequence)と名付けた。
  3. RSISの5'側(左)と3'側(右)に異なる遺伝子の一部を連結して発現することで(GluB Glb less:5'側にグルテリンGluB-1、3'側にグロブリンGlb-1)、両方の遺伝子の発現を抑制することができた(図1)。
  4. 複数のRSIS発現コンストラクトを1つのバイナリーベクターに搭載することで、1度の形質転換で複数(3個以上)の遺伝子発現を抑制することができた(図2)。
  5. 標的とした遺伝子の発現が抑制されている形質転換体では、抑制された遺伝子に由来する21-24塩基の小分子RNA(siRNA)が産生されていた。siRNAは遺伝子発現抑制を引き起こすことが知られているため、RSISを発現させたことで生じたsiRNAによって遺伝子発現の抑制が起こると考えられた(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. RSISは制限酵素認識配列を含まず、RNAiコンストラクトのヘアピン構造のような複雑な立体構造を取らせる必要がないため、ベクター作成が容易である。
  2. RSISを用いることで簡便に複数遺伝子の発現抑制が可能になり、基礎研究・応用研究の両方に非常に有効である。
  3. 複数のアレルゲン遺伝子発現を抑制することで、米アレルギー患者用の遺伝子組換え米を開発することや、一連の代謝経路に関わる遺伝子群の発現を抑制し、代謝経路を改変することが可能と期待される。
  4. イネ以外の作物にも適用できると期待される。
カテゴリ 高付加価値

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