組換え作物に導入した遺伝子が不活性化されるしくみの一端を解明

タイトル 組換え作物に導入した遺伝子が不活性化されるしくみの一端を解明
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2006~2008
研究担当者 沼寿隆
吉川学
土生芳樹
金鍾明
関原明
発行年度 2009
要約 遺伝子組換え作物において、導入した遺伝子の発現が抑制される現象が知られている。導入した遺伝子の発現抑制にはDNAの修飾に加えて、それを覆うヒストンタンパク質の修飾が必要であるが、この過程をMOM1タンパク質がつないでいることを明らかにした。
キーワード 遺伝子組換え作物、遺伝子サイレンシング、非自己遺伝子、ヒストン修飾
背景・ねらい 遺伝子組換え作物に導入された外来性遺伝子は、しばしば非自己の異物として認識され、不活性化される場合が少なくない。このような現象は遺伝子サイレンシングとよばれている。遺伝子組換え作物の開発にあたっては、遺伝子サイレンシングを積極的に利用して不必要な遺伝の発現を抑制したり導入した遺伝子のサイレンシングを回避したりする技術が有用であるが、実用的な技術はおろか、遺伝子サイレンシングのしくみ自体についても不明な点が多い。そこで、外来性導入遺伝子の発現抑制に関わる因子として同定されたMOM1に着目し、その機能の解析を通して遺伝子が不活化されるメカニズムを明らかにすることを目指した。
成果の内容・特徴
  1. MOM1遺伝子の機能を破壊したシロイヌナズナ変異体を用いて、MOM1の働きによりサイレンシングを受ける遺伝子をゲノムワイドに探索した結果、MOM1が主にゲノム中に存在するトランスポゾンの残骸の不活性化に関与していることが明らかになった(図1)。
  2. さまざまなサイレンシング経路により影響を受ける遺伝子群の比較解析から、MOM1は小分子RNAが関与してDNA鎖上に新たにメチル基を付加するRNA依存的DNAメチル化(RdDM)からヒストン修飾に至る経路上のどこかで機能することが明らかとなった。
  3. MOM1によるサイレンシングを受ける遺伝子のひとつについて選び、詳細に解析したところ、MOM1の変異はDNAのメチル化のレベルには影響を与えず、ヒストンの修飾に異常をもたらすことが分かった(図3)。このことから、MOM1は、RdDM経路においてDNAメチル化の下流のヒストン修飾のステップで機能することが確認できた(図2)。
  4. DNAのメチル化とヒストンの修飾のそれぞれが、遺伝子サイレンシングに関わることは知られていたが、両者をつなぐ仕組みは不明であった。MOM1タンパク質は、DNAメチル化の情報をヒストンの修飾(メチル化)として伝達し、そのメチル化状態を維持する機能を持つと考えられた(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 今回の研究により、非自己遺伝子DNAのメチル化とヒストンの修飾をつなぐしくみが明らかになった。今後は、修飾されたヒストンを認識して非自己遺伝子のサイレンシングを成立させる実体の解明が求められる。
  2. 遺伝子組換え作物の開発にあたって、遺伝子サイレンシングを積極的に制御するための技術は開発されていない。今回の成果は、サイレンシング制御技術の確立に向けた、これまでにない新しいアプローチにつながることが期待される。
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