北太平洋亜寒帯水域における表層性魚類とプランクトンの南北分布

タイトル 北太平洋亜寒帯水域における表層性魚類とプランクトンの南北分布
担当機関 遠洋水産研究所
研究課題名
研究期間 1991~1994
研究担当者 伊藤外夫
塩本明弘
上野康弘
石田行正
長澤和也
発行年度 1994
要約 サケ・マス類を含む表層性魚類と動・植物プランクトンとの量的関係を解析することにより、表層性魚類が摂餌活動を通して動物プランクトンなどの生物生産を制御していることが明らかになった。
背景・ねらい 近年、北太平洋亜寒帯水域に生息する主要な魚類であるサケ・マス類に小型化・高齢化現象が認められ、その原因究明が求められている。さらには、地球温暖化など地球的規模の環境変動が亜寒帯水域の生物生産にどのような影響を及ぼすか、注目されている。
遠洋水産研究所では、1994年に北洋資源部に新設された生態系研究室が中心となり、亜寒帯水域におけるサケ・マス類を中心とする生物生産機構を解明する研究に着手した。ここでは、北部中央太平洋とベーリング海に設けられた南北定線で得られた研究結果のうち、サケ・マス類を含む表層性魚類と動・植物プランクトンとの量的関係を検討した。
成果の内容・特徴
  1. 南北定線上の海域は、移行帯(transition zone)、移行領域(transition domain)、亜寒帯領域(subarctic domain)およびベーリング海の4水域に分けられ、移行領域から北側の3水域が亜寒帯水域であった(図1)。
  2. 移行帯ではシマガツオが極めて多かったが、移行領域になると魚類の漁獲は少なく、サケ・マス類がおもに漁獲された(図2)。亜寒帯領域では、サケ・マス類だけが採集されたが、調査年によって個体数は変わり、1992年は少なく、1993年は多かった。ベーリング海におけるサケ・マス類の漁獲は多かった。
  3. 動物プランクトン現存量は、こうした表層性魚類、特にサケ・マス類の南北分布と明らかに逆の分布パターンを示した(図3)。すなわち、サケ・マス類の漁獲が少なかった移行領域では動物プランクトン現存量が高く、サケ・マス類の漁獲が多かったベーリング海では現存量が低かった。亜寒帯領域では、サケ・マス類の漁獲が多かった1993年には動物プランクトン現存量は低く、漁獲が少なかった1992年には現存量が高かった。また、シマガツオが卓越した移行帯における動物プランクトン現存量は著しく低かった。
  4. クロロフィルa量からみた植物プランクトン量は、移行領域で低く、ベーリング海で高かった(図4)。亜寒帯領域では、植物プランクトン量は1992年には低かったが、1993年には高かった。この分布パターンは動物プランクトン量の南北分布と逆であった。また、植物プランクトン量が低かった移行領域では、10μm以上の植物プランクトンの割合が減少し、動物プランクトン現存量に占めるカイアシ類の割合が高かった。
  5. 以上のことから、夏季の北太平洋亜寒帯水域には表層性魚類を高次捕食者とするトップダウン・コントロール機構があり、それら魚類の摂餌活動を通して動物プランクトンなどの低次生産を制御していることが明らかになった。
成果の活用面・留意点
  1. サケ・マス類の増殖事業での普及を図る。
  2. サケ・マス類の国際的な資源管理方策に資する。
  3. 生態系を考慮した水産資源の簡易に利用する。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010019421
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