流域における農林業環境対策の効果予測を目的とした三次元分布型水・物質モデル

タイトル 流域における農林業環境対策の効果予測を目的とした三次元分布型水・物質モデル
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究課題名
研究期間 2002~2006
研究担当者 加藤正樹(森林総研)森康二
吉永育生
吉永秀一郎
久保田富次郎
松森堅治
多田和広((株)地圏環境テクノロジー)
端憲二加藤英孝
坪山良夫
板橋直(農環研)
発行年度 2006
要約  本モデルは,農林業環境対策の事前評価を行うことを目的とする三次元分布型水・物質モデルである。流域を対象として,河川・地下水の水量・水位や窒素濃度の長期非定常計算ができる。
キーワード 農業環境施策,硝酸性窒素,窒素負荷,水理地質,分布型水・物質モデル
背景・ねらい  流域圏における良好な水環境,生態系の保全のためには,森林や農地の適切な管理が必要である。しかし,近年,施肥や家畜排せつ物を起源とする農耕地の面源汚染が顕在化しており,農業環境対策が急がれている。そこで,農林地の水・物質循環を再現する流域モデルを開発することにより,農林業環境対策の事前評価を可能とし,さらに,自然の変化が水・物質循環に与える影響について予測することを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. 農林地の特徴を踏まえた三次元分布型水・物質モデルのプロトタイプを開発した。モデルへの入力は,気象・地形・水理地質などの自然環境条件や農業土地利用・農業用水・営農管理などの農林業条件,さらに土地利用などの社会人文環境であり,モデルを介して,流域内の任意地点の水文量,窒素濃度,流出負荷量を計算する(図1)。
  2. 本モデルは,登坂ら(1996)により開発された三次元分布型流域モデルをベースとし、新開発の畑地・水田・森林の各サブモデルを搭載した農林統合モデルである。農林地流域における水・物質循環の再現を行う(図2)。モデルでは,施肥量の削減や畜産廃棄物処理の適正化等,農林地における環境対策の効果発現の程度や時期の違いを,土壌・地質・気象等の立地条件や管理の違いを考慮しつつ,定量的に評価することが可能である。
  3. 畑地サブモデルは,畑地への施肥窒素の吸着・硝化・脱窒・溶脱・作物吸収等の窒素循環プロセスを再現する。また,土壌・施用有機物中窒素の分解モデルにより,地力窒素や有機物施用の影響を反映できる。さらに,ラングミュア型平衡吸着式を組み込むことで,硝酸性窒素の溶脱における遅延現象を再現する。
  4. 水田サブモデルでは,水田における水管理(湛水・中干し・落水)を再現するとともに,水田湛水中における窒素の形態変化のモデル化を行い,水田の窒素浄化機能を再現する。また,農業水利システムは,恋瀬川流域の用排システム(国営幹線による補給水,地区揚水機場-パイプラインによる配水システム)を再現する。
  5. 森林サブモデルでは,林分の樹冠遮断率の違いによる水移動速度の違いを再現するとともに,窒素循環過程では,森林土壌の最上部であるA層を中心とした窒素循環や,尾根型・谷型・平地林型の森林立地の違いによる窒素循環の違いを再現する。
  6. 茨城県恋瀬川流域(A=237km2)への適用を図ったところ,河川流量については概ね日単位のハイドログラフを再現する結果が得られた(図3)。一方,河川水質の比較では,非かんがい期からかんがい期にかけて(2006年3月~8月末)の全窒素の濃度変化は,概ね再現しているものの,8月末以降の再現性など一部に課題が残った。
  7. 恋瀬川流域における水・窒素移動の長期シミュレーションの試算例を図4に示す。この図は,畑作物の施肥効率を,現況で50%と想定し,これを80~100%に変化させた時の20年後の浅層地下水の窒素濃度を示している。
成果の活用面・留意点
  1. 本モデルの完成度を高め,実用化を進めるため,過去の施肥等の履歴や土地利用,農業用水管理等の変化を考慮した本格的な検証を実流域で行うことが今後の課題である。その課題には,地下水位や地下水質の予測精度の検証,さらには,サブモデルの改良等が含まれる。
  2. 本モデルは,閉鎖性水域への富栄養化塩類の長期流入予測や地下水硝酸性窒素汚染の改善など,予測に負荷流出の経時変化が必要な場合等への適用が期待される。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010018614
カテゴリ 環境対策 水田 施肥 水管理

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