DNAメチル化により遺伝子発現が活性化される新たな分子機構の発見

タイトル DNAメチル化により遺伝子発現が活性化される新たな分子機構の発見
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2004~2008
研究担当者 Meenu Kapoor
久保健一
高辻博志
渋谷健市
馬場晶子
福島説子
発行年度 2008
要約 DNAメチル化は遺伝子サイレンシング誘導に重要な役割を果たす。本研究では、DNAメチル化が遺伝子サイレンシングとは逆に遺伝子発現の活性化にも関わっていることをはじめて示した。遺伝子制御技術への応用や生物の進化への寄与が考えられる。
キーワード DNAメチル化、転写活性化、エピジェネティック、ペチュニア
背景・ねらい
遺伝子サイレンシングの誘導などに、RNAが引き金となるDNAメチル化(RNA指令性DNAメチル化)が関与していることが明らかにされ、その分子機構の概要が近年解明された。このような制御は、様々な生命現象の制御や生物の進化に関わっているとともに、新たな遺伝子操作技術につながる可能性もあることから、重要な研究分野として発展しつつある。本研究では、形質転換ペチュニアに表れた花器官の異常が、これまでに報告された分子メカニズムでは説明できないことに着目し、遺伝子組換え技術にも応用できる新たなエピジェネティック遺伝子制御様式を解明することを目的に詳細な解析を行った。
成果の内容・特徴 1.ペチュニアのpMADS3 は、花の雄しべおよび雌しべに特異的に発現し、花器官の形成を規定する遺伝子である。以前我々は、形質転換ペチュニアにおいて、内在性pMADS3 が花弁で異所的に発現する結果、花弁が雄しべ化する現象を見出していた。その分子機構解明のため、pMADS3発現特異性を規定する第2イントロン配列の逆反復RNAをペチュニア全体で発現させたところ(図1)、pMADS3異所的発現/花弁の雄しべ化が誘導された(図2)。このことから上記現象にはRNAをシグナルとするエピジェネティック制御が関わっていることが示唆された。
2.発現させる逆反復RNAの配列をしぼり込んだ結果(図1)、第2イントロンの1701-1800領域のみで強いpMADS3 異所的発現/花弁の雄しべ化が誘導された。また、DNAメチル化パターンを調べた結果、2ヶ所のシトシンのメチル化が原因であることがわかった(図1)。
3.メチル化シトシン周辺のDNA配列は、植物種間で高度に保存されていたことから、pMADS3発現を抑制する配列(負のシス・エレメント)と推定された(図2)。花弁では通常、このシス・エレメントに転写抑制因子が結合してpMADS3発現が抑制されており(図3左)、一方、このシス・エレメントがDNAメチル化されると転写抑制因子の結合が阻害され、発現抑制が解除されて異所的発現に至ると考えられる(図3右)。
4.導入されたDNAメチル化は、交配によって導入遺伝子を除いた後もゲノムpMADS3 に保持され、それにともなって花弁が雄しべ化する形質も後代に遺伝した。このことは、逆反復配列を発現させてDNAメチル化を誘導する手法により導入遺伝子を残さずに内在性遺伝子の発現を制御できることを示している。また、RNAが引き金となるDNAメチル化は自然界でも起こり得るので、環境適応などの結果導入されたDNAメチル化により、後天的に獲得した遺伝形質が固定され、生物の進化に寄与した可能性が示唆される。
成果の活用面・留意点 逆反復RNAの発現により転写のシス・エレメントをDNAメチル化する方法は、新たな遺伝子発現制御法として応用できる。本法により、転写の抑制(遺伝子サイレンシング)および転写の活性化の両方が可能である。ポスト・ゲノム研究により多くの遺伝子の転写制御配列に関する情報が蓄積すれば、応用範囲が広がると期待される。植物の転写制御の基本的な分子機構によるのでおそらく植物種に関わらず応用できる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010016889
カテゴリ ペチュニア

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