クワは乳液で昆虫の食害から身を守る

タイトル クワは乳液で昆虫の食害から身を守る
担当機関 (独)食品総合研究所
研究課題名
研究期間 2003~2005
研究担当者 今野浩太郎
小野裕嗣
中村匡利
和佐野直也
立石剣
平山力
田村泰盛
服部誠
小山朗夫
河野勝行
発行年度 2005
要約 クワの葉がカイコ以外の昆虫に対して強い毒性と耐虫性を持つことと、その原因がクワの葉から滲出する白い乳液に高濃度で含まれる糖代謝の阻害剤として知られる3種の糖類似アルカロイド物質や高分子物質などの成分にあることを解明した。
キーワード
クワ、乳液、耐虫性、糖類似アルカロイド、カイコ、エリサン、ヨトウガ
背景・ねらい クワを含む数万種にも及ぶ多くの植物が葉の傷口から乳液を出すが、乳液成分とその本来の機能については未知の点が多かった。最近、我々はパパイアやイチジクの乳液に含まれるシステインプロテアーゼというタンパク質分解酵素が植物を昆虫の食害から守る耐虫性タンパク質であることを世界で初めて示したが、この結果は乳液・乳液成分が植物の耐虫性に重要であることを示唆していた。一方、クワはカイコの良好な餌であり、耐虫性や昆虫に対して毒性がある植物とは考えられて来なかった。一方で、葉が柔らかく栄養価に富むにもかかわらず、野生状態で昆虫に食害を受けることが少ないため、何らかの耐虫性の存在が推測された。そこで、クワの耐虫性とクワ乳液が耐虫性に果たす役割について検証した。
成果の内容・特徴
  1. エリサン・ヨトウガにクワ葉を摂食させた場合、いずれも成長せず死亡したが、細切り水洗処理により乳液を除去した葉を摂食させたところ、エリサン・ヨトウガは死亡することなく成長した(図1)。
  2. クワ乳液成分をNMRを用いて分析したところ、糖代謝酵素阻害剤として知られ血糖値上昇抑制効果も報告される3種の糖類似アルカロイドが乳液合計の2.5%(乾重の18%)の高濃度で存在しており、石垣島産・つくば市産の野生クワで濃度が特に高かった(図1)。
  3. 人工飼料を用いて、乳液および乳液成分の毒性・成長阻害活性を調べたところ、クワ乳液と糖類似アルカロイドは、ともにエリサンに対し顕著な成長阻害活性を示した。一方、カイコは糖類似アルカロイドで全く成長を阻害されず、生理適応機構の存在が示唆された。クワ乳液の耐虫性は石垣島産の野生クワでは糖類似アルカロイドと未知の高分子因子により同程度ずつ担われていた(図2)。
  4. 今回の結果は、以前の我々のパパイア乳液に関する研究と合わせ、植物乳液とその成分が一般的に植物の耐虫性機構を担うこと、および植物乳液が農薬・医薬として、あるいは作物の耐虫性育種に利用できる可能性をもった有用な生理活性物質の宝庫であることを示唆している。
成果の活用面・留意点
  1. 植物乳液は有用物質探索の標的を絞りやすく、比較的少数の物質が高濃度で含まれるため、物質の精製が容易であり、今後世界に何万種類も存在している乳液を出す植物の乳液から、数多くの有用な生理活性物質が発見されるものと期待される。
  2. 植物乳液中に存在する有用物質を利用した新たな農薬の開発や耐虫性育種が進むものと期待される。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010016859
カテゴリ 育種 いちじく カイコ 農薬

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