カイコ中部絹糸腺での特異的遺伝子発現系の確立

タイトル カイコ中部絹糸腺での特異的遺伝子発現系の確立
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2003~2004
研究担当者 小島桂
小林功
神田俊男
瀬筒秀樹
田村俊樹
内野恵郎
発行年度 2004
要約 酵母のGAL4/UAS系を利用して、カイコに導入した遺伝子を中部絹糸腺において効率良く発現させる方法を確立した。この方法を利用することにより、導入遺伝子由来の組換えタンパク質を中部絹糸腺で合成し、繭糸から抽出することが可能になった。
キーワード 組換えカイコ、組換えタンパク質、大量生産、中部絹糸腺
背景・ねらい 組換えカイコを利用して、医療などに用いるタンパク質を生産する方法を開発することは重要な課題である。これまでの研究では、カイコによる組換えタンパク質の生産は後部絹糸腺のみで可能であった。中部絹糸腺はタンパク質の生産能力は後部絹糸腺より低いが、この組織で合成されるセリシンは水に溶けやすいことから、中部絹糸腺で合成された組換えタンパク質の精製は容易であることが予想される。本研究では、セリシン遺伝子のプロモーター領域と酵母のGAL4/UAS系を利用して中部絹糸腺での導入遺伝子の発現系の開発を試みた。その結果、中部絹糸腺において大量に組換えタンパク質を合成する方法を作出するのに成功した。この系では合成されたタンパク質が容易に繭糸中に分泌されるため、組換えタンパク質の生産方法として有望である。
成果の内容・特徴
  1. 中部絹糸腺で最も発現量の高いセリシン1遺伝子の上流をプロモーターとするGAL4遺伝子(Ser1GAL4)を作出し、トランスポゾンpiggyBacの逆位末端反復配列の間に組み込んだ。次に、眼で赤い蛍光を発するマーカー遺伝子3XP3DsRedを挿入した組換えカイコ作出用のベクタープラスミドを構築した(図1A)。
  2. このベクターを発生初期の卵に注射し、3XP3DsRedをマーカーとしてスクリーニングした結果、2系統のSer1GAL4遺伝子を組み込んだカイコが作出された。次に、このSer1GAL4系統をUAS-GFPホモ系統と交配した(図1B)。
  3. 次世代において両方の遺伝子を持つ個体のGFPの発現を調べた結果、GFP遺伝子は効率よく、中部絹糸腺で発現した(図2A)。注目すべきは中部絹糸腺で発現したGFPが繭糸へ分泌されたことである。今回用いたGFPは特殊な分泌シグナルを持たないにもかかわらず、吐糸期になると中部絹糸腺細胞で作られたGFPは内腔に分泌され、絹糸腺前部に移動し、繭糸に分泌された。
  4. Ser1GAL4/UASGFP系統にフィブロイン合成が異常なNd-s系統を交配し、その後代の中部絹糸腺から、GFPの抽出を試みた。その結果、組換えカイコで合成されたGFPは図2Bに示すようにタンパク質の変性剤を含まない水や緩衝液で抽出できることが分かった。

図1

図2
成果の活用面・留意点
  1. カイコによる組換えタンパク質の生産に利用できる。
  2. 後部絹糸腺で分泌させることが難しいコラーゲンや膜タンパク質の生産に有効と思われる。
  3. フィブロインを作らない突然変異Nd-sを利用することにより、カイコで作られる組換えタンパク質の抽出・精製がさらに容易になると予想される。
カテゴリ カイコ

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