トビモンオオエダシャクの幼虫は化学的にも植物に擬態する

タイトル トビモンオオエダシャクの幼虫は化学的にも植物に擬態する
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2000~2004
研究担当者 安居拓恵
安田哲也
若村定男
秋野順治
発行年度 2004
要約 餌植物の枝に視覚擬態することで知られているトビモンエダシャク幼虫は体表ワックスの組成でも寄主植物の枝の成分に化学擬態し、天敵であるアリ類からの攻撃を免れている。寄主植物が変わると2回の脱皮を経てトビモンオオエダシャクの体表物質組成が変化する。アリは、植物とそれに化学擬態したエダシャク幼虫を化学的に見分けられない。農業生物資源研究所・生体機能研究グループ・昆虫行動制御物質研究チーム
キーワード 擬態、化学擬態、体表ワックス、餌認識
背景・ねらい トビモンオオエダシャクの幼虫は外見上植物の枝に良く似た形態と色彩をもち、それによって視覚に頼って餌を探索する鳥類からの捕食を免れている。一方、アリ類は生態系における有力な捕食者であり、視覚よりも嗅覚などの化学感覚によって餌探索をおこなう。しかしながら、トビモンオオエダシャク幼虫をクロヤマアリに遭遇させても、まったく攻撃を受けないことを発見した。そこで、昆虫全般に種認識因子の候補とされている体表ワックス成分に着目して寄主植物の表皮ワックスとの比較分析をおこなうことによって、本種幼虫が寄主植物に対して化学的にも擬態をしている可能性についての解明をねらった。
成果の内容・特徴
  1. クロヤマアリはエダシャク幼虫に対して攻撃的な行動を全く示さなかった(図1)。
  2. ガスクロマトグラフ直結質量分析装置にかけたところ、3種の食餌植物から採集した幼虫の体表ワックス成分は食餌植物の枝の樹皮表面のワックス成分によく似ていた(図2)。
  3. サクラで育てた3齢幼虫の餌植物をスダジイとツバキに変えたところ、体表ワックス成分組成は脱皮ごとに変化し、2回の脱皮を経て新しい餌植物のものと同じになった(図3)。
  4. 幼虫を異なる餌植物で飼育すると、自身が育った樹種の枝を休息場所として選ぶ傾向が顕著であった(図4)。
  5. 視覚的な植物擬態をしている昆虫が化学的にも植物に擬態していることが発見されたのは初めてである。しかも、寄主植物の転換に応じて体表ワックス成分を変化させているという事例には類例がない。

図1

図2

図3

図4
成果の活用面・留意点
  1. 潜在的な捕食性天敵であるアリ類を害虫制御に利用する場合の参考事例となる。
  2. 体表ワックス成分は、植物葉から取り込んだ物質がそのまま体表に分泌されるのか、それとも昆虫自身が新たに生合成しているのか、という疑問は将来の課題である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010016836
カテゴリ 害虫 さくら

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