植物乳液中システインプロテアーゼが植物の耐虫性に果たす役割

タイトル 植物乳液中システインプロテアーゼが植物の耐虫性に果たす役割
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2001~2005
研究担当者 河野勝行
今野浩太郎
中村匡利
田村泰盛
服部誠
平山力
立石剣
発行年度 2003
要約 パパイアやイチジク属植物を始めとする植物の乳液中にしばしば存在するシステインプロテアーゼは、鱗翅目害虫に対し顕著な殺虫毒性を示す植物の防御タンパク質である。これらの植物の葉の強い毒性は、乳液の除去やシステインプロテアーゼ特異的なインヒビターE-64の塗布により完全に失われる。
キーワード 植物乳液、システインプロテアーゼ、耐虫性、殺虫タンパク質、生態学
背景・ねらい 多くの植物が食害・傷害を受けたときに傷口から乳液を分泌する。乳液の役割は、乳液中にしばしばアルカロイドを始めとする毒物質が存在していることから食害昆虫に対する防御機構だと考えられるが、毒性分が発見されていない植物も多い。一方、これらの植物の乳液中にはシステインプロテアーゼ、キチナーゼを始めとする種々の酵素・ペプチドが発見されているが、植物にとっての本来の機能は不明であった。そこで、パパイアやハマイヌビワ(クワ科イチジク属)の乳液に大量に含まれるシステインプロテアーゼが耐虫性防御物質である可能性を検証した。
成果の内容・特徴
  1. パパイアやハマイヌビワの葉を広食性の鱗翅目幼虫のエリサン(ヤママユガ科)や重要害虫のヨトウガやハスモンヨトウ(いずれもヤガ科)の幼虫に摂食させたところ、葉は顕著な殺虫毒性や成長阻害活性を示した(図1,図2)。
  2. パパイアやハマイヌビワの葉を、細切水洗して乳液を除去する処理をしたもの、あるいはシステインプロテアーゼ特異的阻害剤E-64を塗布する処理をしたものをエリサン、ヨトウガ、ハスモンヨトウの幼虫に摂食させたところ、いずれの処理でも殺虫活性や成長阻害活性は完全に失われ、本来の食草を摂食させたときとほぼ同様に順調に成長した(図1,2)。
  3. パパイアのパパイン、イチジクのフィシン、パイナップルのブロメラインなど、種々の植物由来のシステインプロテアーゼを人工飼料に添加した餌をエリサン、ヨトウ、ハスモンヨトウの幼虫に摂食させたところ、いずれのシステインプロテアーゼも顕著な成長阻害活性や殺虫性を示した(図3)。
  4. システインプロテアーゼ活性は葉全体としては低いが、乳液中の活性は高くエリサンの致死濃度の20倍に達していた。体の小さな昆虫は葉を食害した瞬間に毒物質が濃縮された乳液を大量に浴びるため、乳液は植物の経済的かつ有効な防御と考えられる。
以上の結果から、乳液中のシステインプロテアーゼが、重要害虫をふくむ広範な昆虫に対して有効な植物の防御物質であることが判明した。

図1

図2

図3
成果の活用面・留意点
  1. 今後、種々の植物の乳液から、農業上有用な殺虫性や成長阻害作用があるタンパク・ペプチド・酵素・化合物が発見される可能性がある。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010016812
カテゴリ いちじく 害虫 パイナップル びわ

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