イネの鉄耐性、オオムギ赤かび病抵抗性の高精度・高能率QTL分析

タイトル イネの鉄耐性、オオムギ赤かび病抵抗性の高精度・高能率QTL分析
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 1999~2004
研究担当者 佐藤和広
清水顕史
川崎信二
谷坂俊隆
武田和義
堀清純
発行年度 2002
要約 複雑な遺伝子構成を持ったイネの鉄過剰耐性やオオムギの赤かび病抵抗性等の量的形質座位(QTL)の精密分析が、適当な組換え自殖系統に対してHEGS(High Efficiency Genome Scanning:高能率ゲノム走査法)を適用することにより、短い時間とわずかな経費で実現された。
背景・ねらい QTL分析は、複数の遺伝子が関与する複雑な形質を分析するための強力な手法であるが、実際にこれを行うに当たっては多数の遺伝子マーカーを百から二百個体について分析する必要があり、多大な時間と経費とを要しながらも、その分析精度については十分でないケースもしばしば見られる。先に極めて高い効率で精密なゲノム地図の作製ができることを示した高能率ゲノム走査法を応用すれば、高精度のQTL分析を短期間・低コストで実現できることを実証する。
成果の内容・特徴
  1. 熱帯では、ラテライトと呼ばれる酸化鉄を多く含む赤色土壌が広く分布しており、こうした土地を水田にすると、鉄分が還元鉄イオンとして大量に水に溶けだし、耐性のないイネでは、葉が赤褐色に変色するなど生育阻害を起こす。熱帯で主に育成されているインディカ種のイネは鉄分に対する耐性が弱いが、むしろ温帯で栽培されるジャポニカ種の方が鉄過剰に対しては比較的耐性が高い。われわれは、特に耐性が高いとされる銀坊主(ジャポニカ)とインディカ種のKasalathとの組換え自殖系統を利用して、半年足らずで1300マーカーからなる高密度地図を作製することができた。
  2. この組換え自殖系統を高濃度の鉄を含む培養液で水耕栽培して、葉への鉄分蓄積のQTL分析を行ったところ、図1に見るようなこれまでにない精密なピークが得られた。これは根が鉄分を排除できずに体内に取り込む傾向を示し、インディカの鉄への感受性の原因遺伝子の存在する領域を精密に示している。より簡便な分析では、87プライマーペアによる233マーカーの分析をDNA抽出から始めて1ヶ月程度で完了することが可能である。
  3. 赤かび病はオオムギの最重要病害で現在も有効な防除法が無く、抵抗性育種が唯一の対応策であるが、その遺伝学的構成は複雑でこれまではっきりした形での分析結果は無かった。我々は岡山大学資源生物学研究所との共同研究により、赤かび病抵抗性のロシア6号と感受性のH. E. S. 4の組換え自殖系統のHEGS/AFLPによる高密度マップを作製し、同時に切り穂検定法による抵抗性のQTL分析を行った結果、3カ所のほぼ同程度の力価の座位が明瞭に確認された(図2)。このうち一遺伝子と他の遺伝子との間には強い相互作用が存在することも明らかになった。
成果の活用面・留意点
  1. こうしたHEGSを用いた分析は、適当な組換え自殖系統があれば短時間・低コストで行うことが出来、低コストでPCRマーカーへの変換も容易である。ゲノムサイズの大小に係わらず病原菌からオオムギのような作物にまで応用可能である。
  2. HEGSの装置も簡便で扱いやすいことから、育種現場での広い普及が期待される。
  3. 赤かび病抵抗性は各座位毎に単独に分離した自殖系統を用いて、それぞれの抵抗性遺伝子座の精密分析を進め、最終的には各遺伝子の単離にも結びつける予定である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010016796
カテゴリ 育種 大麦 水田 水耕栽培 抵抗性 抵抗性遺伝子 低コスト 防除

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