イネゲノム重要部分の全塩基配列の解読終了

タイトル イネゲノム重要部分の全塩基配列の解読終了
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2001~2005
研究担当者 佐々木卓治
松本隆
沼寿隆
水野浩志
長村吉晃
片寄裕一
矢野昌裕
発行年度 2002
要約 我が国が中心的役割を果たしているイネゲノム配列解読国際コンソーシアムによってイネゲノムの重要部分の高精度塩基配列が解読された。
キーワード イネ、ゲノム塩基配列、精密物理地図、遺伝子予測
背景・ねらい 我が国の主食であり、世界的にも重要な食料であるイネのゲノム研究はイネの分子遺伝・育種研究の基盤として重要であるのみならず、多くの穀物ゲノム研究の基盤としても重要である。1998年に我が国を中心に結成された国際コンソーシアムは、高精度の物理地図を作成し、イネゲノムの正確な塩基配列の解明を行ない、2002年12月にゲノム全体の高精度配列の解読を終了した。我が国はその中心的役割を担い、6本の染色体の計約2億塩基対の高精度解析を終了した。
成果の内容・特徴
  1. イネゲノムのDNAをPACまたはBACベクターを用いて大腸菌にクローニングし、遺伝マーカーや発現遺伝子マーカーを用いてそれぞれのPAC/BACクローン(平均インサート長150kb)をゲノム中のそれぞれが由来する箇所に張り付けた地図(物理地図)を作成した。さらに様々な手法を用いて隙間を埋め、物理地図を精密化した。現在この地図は我が国が担当する6本の染色体(第1,第2,第6,第7,第8,第9)のすべての95%以上の領域をカバーしており、この地図上のPAC/BACクローンが配列解読の対象とされている。
  2. これらのPAC/BACクローンからDNAを精製し、細断後プラスミドベクターを用いてショットガンライブラリーを作成し、各々のクローンの両末端から平均約500塩基を解読し、コンピュータを用いて配列編集を行い、元のPAC/BACの配列を再現した上で公的データベースに登録した。われわれはサンプル調製ロボットシステムとキャピラリー型自動シーケンサーを組み合わせた高効率な系を構築し、配列解読を効率化し、加速化した(図1)。2002年末までに我が国は1783個のPAC/BACクローンを登録し、登録塩基数は延べ253Mbであった。ここからクローン間の重複を除いた塩基数は183Mbであった。ちなみに国際コンソーシアムの重複を除いた登録塩基数は366Mbであり、最新の物理地図から求めたイネ全ゲノムサイズ(396Mb)の92%に相当し、セントロメア等の解析の困難な領域を除いてほぼ全域の重要部分の塩基配列解読を終了し、公開したことになる。2002年12月18日、小泉首相により、イネゲノム解読終了宣言がなされた。
  3. 同時にイネゲノム塩基配列の完全解読にも取り組み、最長の染色体である第1染色体の塩基配列の完全解読を終了した。遺伝子予測プログラムを用いて6756個の遺伝子が予測された。物理地図に基づいた正確な塩基配列は全ゲノムショットガン法によって解析された配列と比較して優位性は明らかである(図2は2002年公表されたインディカ種の全ゲノムショットガン配列を日本晴の完全解読配列の一部と対応させたものである)。
  4. 国際コンソーシアムによるゲノム塩基配列データはすべて公的データに登録され公開されている。イネゲノム研究チーム(RGP)のホームページからは同配列をクローン毎に整理して表示している(http://rgp.dna.affrc.go.jp/cgi-bin/statusdb/seqcollab.pl)。またイネゲノム自動アノテーションデータベース(RiceGAAS,http://ricegaas.dna.affrc.go.jp/)では、全クローンの予測遺伝子データを公開している。
成果の活用面・留意点
  1. 我々は統合データベースINE(http://rgp.dna.affrc.go.jp/giot/INE.html)を構築し、今回明らかになったイネゲノム塩基配列と、遺伝地図、物理地図を関連づけており、重要な形質の染色体上での位置と、塩基配列や予測遺伝子が対応するようになっている。
  2. 全ゲノム配列の公開によって、イネや穀類の遺伝子の単離はより容易になると期待される。同時にイネ他品種やイネ科の多植物とのゲノムレベルでの比較によっていろいろな種間のゲノム塩基配列の共通点と相違点が明らかになることが期待される。
  3. 今後はコンソーシアム全体としてイネゲノム配列の完全解読を目指し、穀類のgold standardを作成する。このために今後も引き続いて、すでに完成した第1染色体以外の染色体の完全解読を行う予定である。
カテゴリ 育種 データベース 品種 ロボット