C3植物とC3-C4中間植物との属間交雑による光呼吸の抑制とその機構の解明

タイトル C3植物とC3-C4中間植物との属間交雑による光呼吸の抑制とその機構の解明
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 2001~2003
研究担当者 近藤 歩(名城大農)
金子幸雄
松澤康男(宇都宮大農)
上野 修
房 相佑
和田義春
発行年度 2001
要約 C3植物のダイコンとアブラナ科のC3-C4中間植物Diplotaxis tenuifoliaから作出した属間交雑植物では、葉の内部構造や光呼吸鍵酵素の細胞特異的な発現パターンは、両親からのゲノムの構成比に従い遺伝し、光呼吸はダイコンよりも低く抑えられた。
キーワード アブラナ科植物、C3植物、C3-C4中間植物、属間交雑、光呼吸制御、グリシンデカルボキシラーゼ
背景・ねらい C3植物では、光合成により固定された二酸化炭素の一部は光呼吸により放出され、光合成効率の低下の主因となっているが、C3-C4中間植物では光呼吸は低く抑えられている。光呼吸を制御するための技術を構築することは、作物の光合成能の向上を図る上で重要である。本研究では、アブラナ科のC3-C4中間植物Diplotaxis tenuifolia(DtDt)とC3植物のダイコン(RR)との間で、ゲノム構成が異なった交雑植物を作出して、それらの葉構造や光合成・光呼吸特性を比較し、C3-C4中間植物における光呼吸の抑制機構がどのように遺伝するのかを検討した。
成果の内容・特徴
  • D. tenuifolia(2n=22; DtDt)を種子親、ダイコン(2n=18; RR)を花粉親として受粉後、子房培養と胚培養の併用およびコルヒチン処理を施し、ゲノム構成が異なった3タイプの交雑植物(DtDtR, DtDtRR, DtRR)を作出した。交雑植物の葉、花、草型はいづれも両親の特徴を共有し、DtとRのゲノム構成比に従って、DtあるいはRの特徴を強く表した。
  • DtDtでは維管束鞘細胞が発達し、求心的に配列した多量の葉緑体やミトコンドリアを含み(図1)、光呼吸鍵酵素のグリシンデカルボキシラーゼ(GDC)はこれらのミトコンドリアに特異的に蓄積していた。RRでは維管束鞘細胞は少数のオルガネラしか含まず、GDCは大部分葉肉細胞のミトコンドリアに蓄積していた。交雑植物では、葉の内部構造やGDCの局在パターンは、DtとRとのゲノム構成比に従い異なり、Rに対するDtの割合いが高くなるほどC3-C4中間的な特徴を表した(図1)。
  • 二酸化炭素補償点は、DtDtでは低く(19.8μl/l)、RRでは高い値(49.7μl/l)を示した。交雑植物のDtRRではダイコンと類似していたが、DtDtRRとDtDtRでは両親との中間的な値を示した(図1)。光合成速度はDtDtとDtDtRで高く、RRで低い値を示し、DtDtRRとDtRRでは両者の中間的な値を示した。
  • 以上の結果より、交雑植物ではC3-C4中間植物に特徴的な葉の内部構造や光呼吸特性は、それぞれのゲノムの構成比に従い遺伝することが明かとなった。また、C3-C4中間植物における光呼吸の抑制は、主に維管束鞘細胞オルガネラの形態分化とGDCの維管束鞘細胞特異的な発現によるものと考えられた。
  • 成果の活用面・留意点
    1. 本研究から、どのような機構によりC3-C4中間植物の光呼吸が低く抑えられているのかが明確となった。またその特性は属間交雑することにより、同じアブラナ科のC3植物に遺伝することが明かとなった。今後、この手法が他のアブラナ科植物にも適用できるのか検討する。またゲノムのセットではなく、個々の染色体を添加することにより、C3-C4中間植物の光呼吸の遺伝性をより詳細に解析する。
    URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010016752
    カテゴリ あぶらな シカ 受粉 だいこん

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