オオムギ液胞膜プロトンポンプの環境応答における生理的役割

タイトル オオムギ液胞膜プロトンポンプの環境応答における生理的役割
担当機関 農業生物資源研究所
研究課題名
研究期間 1997~1997
研究担当者
発行年度 1997
要約 オオムギから液胞膜プロトンポンプ遺伝子を単離した。このうちのプロトン輸送型ピロホスファターゼの一つの遺伝子は、塩ストレスによって短時間で強く発現し、ABAによっても同様の変化を示した。これらの結果から、この遺伝子がストレスやホルモンを介する環境応答に関与する可能性が示された。
背景・ねらい  植物の液胞膜にある2種類のプロトンポンプ、プロトン輸送型ピロホスファターゼ(V-PPase)とプロトン輸送型ATPase(V-ATPase)は、細胞質のpH調整を行い、液胞内へのイオン等の物質輸送の原動力である。これらのポンプは、プロトンとイオンの対向輸送系等を介して塩ストレス回避等に見られる環境応答において重要な働きをしていると考えられている。V-ATPaseについては動物等を含めて広く研究されているが、植物や光合成細菌でのみ見つかっているV-PPaseについての生理的役割はほとんど判っていない。本研究では、V-PPaseが塩ストレス等に対して重要な働きをしていると考え、耐塩性の高い作物であるオオムギのV-PPase遺伝子に着目し、ストレスやホルモンに対する発現変化を解析した。
成果の内容・特徴
  1. オオムギからV-PPaseをコードするcDNAクローンを2種類(PP1、PP10)、V-ATPaseの触媒サブユニットをコードするクローンを1種類(ATP68)得た。PP1の遺伝子発現は、非展開葉で最も高く、PP10では根において最も高かった(図1)。
  2. 塩処理したオオムギの根におけるPP1の遺伝子発現は、短時間で顕著に上昇し、その上昇の割合はPP10やATP68に比べて高かった(図2)。また、この発現上昇の一部は高浸透圧ストレスによるものであった。以上の結果から、V-PPaseの遺伝子発現に対する塩ストレス誘導性が明らかになり、塩ストレス回避に対してV-PPaseが重要な働きをしている可能性が示された。
  3. ABA、2,4-DおよびGA3をそれぞれ処理したオオムギにおけるプロトンポンプの遺伝子発現を調べたところ、根におけるPP1の遺伝子発現はABAおよび2,4-Dにより顕著に上昇した。さらにホルモン処理に伴う各遺伝子の発現量を定量し、その経時的変化を調べたところ、PP1遺伝子の発現量はABA処理後一過的で急激な上昇を示し、その最大レベルはPP10やATP68よりはるかに大きかった(図3)。以上の結果から、PP1の遺伝子発現がABAや2,4-Dによって強い制御を受け、V-PPaseの遺伝子発現に対するホルモン誘導性が初めて明らかになった。また、PP1とPP10のアイソフォーム間で異なった生理的役割が存在することが示された。
成果の活用面・留意点
    作物に塩や乾燥ストレス耐性を付与することは、21世紀の食糧問題に向けて世界的な緊急課題である。作物におけるストレスやホルモンを介する環境応答のメカニズムを知る上で、V-PPaseはよい手がかりになると思われる。
カテゴリ 大麦 乾燥 輸送

この記事は