エゾシカから初めて分離されたトリパノソーマ原虫

タイトル エゾシカから初めて分離されたトリパノソーマ原虫
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究課題名
研究期間 2005~2007
研究担当者 芝原友幸
菅野徹
石原涼子
内田郁夫
畠間真一
門田耕一
鈴木正嗣(岐阜大)
発行年度 2007
要約  エゾシカからトリパノソーマ原虫を初めて分離した。その原虫(TSD1)は、Stercoraria属 Megatrypanum亜属に分類され、遺伝学的にT. theileriに近縁であるが、in vitroでの増殖様式や核型などの点で、T. theileriと異なる性状を持つ。
キーワード エゾシカ、トリパノソーマ、分離、Stercoraria属、Megatrypanum亜属
背景・ねらい  エゾシカ(Cervus nippon yesoensis)(ニホンジカの一亜種)は、北海道内で生息数や分布域が急速に拡大し、放牧地など家畜の飼養環境にも頻繁に野生個体が出没していることから、両者が接触する機会は増えている。この様な状況の中で、エゾシカに由来する病原体の伝播の可能性が危惧されており、我が国におけるシカ類の感染症に関する調査は、緊急かつ重要な課題となっている。本研究では、エゾシカに感染するトリパノソーマ原虫の分離・培養とその性状について解析する。
成果の内容・特徴
  1. 北海道で捕獲された1歳のメス野生エゾシカから、トリパノソーマ原虫(TSD1)を分離した。
  2. TSD1は、シカ腎臓初代培養細胞を支持細胞として、20%牛胎仔血清含有イーグルMEM培養液で、長期間の維持培養が可能である。一方、一般的なトリパノソーマの培養環境であるNNN血液寒天培地や、シカ腎臓細胞を含まない培地、牛腎臓株化細胞や鶏胎児線維芽細胞をシカ腎臓細胞の代替として含む培地では、維持培養できない。
  3. 培養液中のTSD1は、エピマスティゴートが大半を占め(>85%)、その他にトリポマスティゴート、プロマスティゴート、スフェロマスティゴート、アマスティゴートが混在する(図1)。
  4. 電子顕微鏡像では、鞭毛、鞭毛嚢、脂肪滴、厚い三層構造の外皮、大型のキネトプラストなど、トリパノソーマ原虫に特徴的な構造物が確認される(図2)。
  5. 18SリボソームRNAコード領域の遺伝子配列を基にした遺伝学的分類により、TSD1はStercoraria属 Megatrypanum亜属に分類され、牛に感染性のあるT. (Trypanosoma) theileriに最も近縁な種である(図3)。
  6. 一方、in vitroでの増殖様式や核型の点で、T. theileriと異なることから、別種と考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. トリパノソーマ原虫の感染がエゾシカで証明され、家畜や野生動物における衛生管理上、重要な資料となる。
  2. エゾシカ由来トリパノソーマ原虫の新たな分離・培養技術が示され、当該研究分野の進展に寄与することが期待される。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010016314
カテゴリ あま シカ

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